プレリュード BA5 は、スポーツカーとして語られることもあれば、デートカーの代表格として扱われることもあり、評価が一方向に定まりにくい存在です。
しかし当時のラインアップや市場環境を整理すると、BA5は決して曖昧な立ち位置の車ではありませんでした。
FFレイアウトを採用しながら、走り・デザイン・装備のバランスを高い次元でまとめ、ホンダの中核クーペとして明確な役割を担っていました。
現在では後継世代やタイプR系の影に隠れがちですが、1980年代後半という時代背景を踏まえると、その存在意義ははっきり見えてきます。
本記事では、BA5がどのような思想で生まれ、どの層を狙い、ホンダの車種体系の中でどんな位置付けにあったのかを、当時の状況に沿って整理します。
購入や維持を検討する前段階として、「そもそもこの車は何だったのか」を理解するための記事です。
Contents
プレリュード BA5の基本概要と成り立ち

プレリュード BA5 は、1987年に登場した3代目プレリュードに属する型式で、ホンダが「スペシャリティクーペ」として展開していたプレリュードシリーズの中核モデルです。
BA5は、それまでの2代目から大きく方向転換する形で設計され、単なるパーソナルクーペから“走りも意識した上級FFクーペ”へと進化した世代だと整理できます。
当時のホンダは、シビックやインテグラで若年層向けのスポーティ路線を確立しつつ、上級志向のクーペとしてプレリュードを位置付けていました。
BA5はその戦略の中で、快適性・先進装備・走行性能を高い次元で両立させる役割を担っていました。
価格帯もシビックやCR-Xより上に設定され、明確に「ワンランク上」を意識した車種です。
構造面ではFFレイアウトを採用し、エンジンを横置きとすることで、室内空間と走行安定性を両立させています。
これは当時のホンダが一貫して追求していた合理性の表れであり、FRにこだわらず、FFでも“運転の楽しさ”を成立させるという思想が読み取れます。
BA5はその実験的要素を含みつつ、市販車として高い完成度を目指したモデルでした。
また、BA5世代はデザイン面でも大きな特徴を持ちます。
低くワイドなプロポーション、リトラクタブルヘッドライト、滑らかなボディラインなど、1980年代後半のトレンドを色濃く反映しています。
これにより、実用車とは明確に異なる「所有する満足感」を提供する存在になっていました。
重要なのは、BA5が“尖った少量生産モデル”ではなく、量販を前提とした戦略車であった点です。
ホンダはこの世代のプレリュードを通じて、ブランドイメージの引き上げと、若年〜中堅層のステップアップ需要を同時に狙っていました。
そのため、走りだけ、デザインだけに偏らない総合力が求められていたと考えられます。
要点まとめ
- BA5は3代目プレリュードに属する中核モデル
- スペシャリティクーペとして上級志向を担った
- FFレイアウトで合理性と走行性能を両立
- 1980年代後半のデザイン潮流を強く反映
- ブランドイメージ向上を狙った戦略車だった
この世代のプレリュードは、資料を追っていくと「ちょうどいい欲張りさ」を感じます。
走りも、見た目も、快適性も、全部を諦めない姿勢が当時のホンダらしいですね。
当時のホンダ車ラインアップにおける位置付け
プレリュード BA5 を正しく理解するには、単体で評価するのではなく、当時のホンダ車ラインアップ全体の中で、どこに置かれていたのか を整理する必要があります。
BA5は「スポーツカー」でも「高級車」でもなく、その中間に明確な役割を与えられたモデルでした。
1980年代後半のホンダは、車種ごとに役割分担がはっきりしていました。
エントリー層にはシビック、若年層向けのスポーティモデルとしてCR-X、実用と上級志向を兼ねるインテグラ、そしてその上に位置するスペシャリティクーペがプレリュード。
BA5はこの中で、デザイン・装備・走行性能をまとめて体験させる“象徴的存在” を担っていました。
価格帯で見ても、BA5はシビックやCR-Xより明確に上で、インテグラの上位グレードと重なる、もしくはやや高い位置に設定されていました。
これは、単に大きい・豪華という意味ではなく、「次のステップとして選ばれる車」であることを意識した設定。
若年層が最初に選ぶ車ではなく、一段上の満足感を求める層 がターゲットでした。
走行性能の面でも、BA5は突出したスポーツモデルではありません。
CR-Xのような軽快さや、後年のタイプR的な尖りは抑えられています。
その代わり、直進安定性、高速域での余裕、快適装備とのバランスが重視されていました。
これは「日常から非日常までを一台でこなす」という役割設定に沿ったものです。
以下は、当時の主なホンダ車との役割比較の整理です。
| 車種 | 主な役割 | 想定ユーザー |
|---|---|---|
| シビック | 実用・入門 | 幅広い層 |
| CR-X | 軽量スポーツ | 若年・走り重視 |
| インテグラ | 実用+スポーティ | 若年〜中堅 |
| プレリュード | 上級クーペ | 中堅層 |
このように見ると、BA5は「趣味性と実用性を同時に成立させる旗艦的クーペ」だったことが分かります。
ホンダは当時、FRスポーツではなくFFでこの役割を成立させる道を選びました。
その選択自体が、BA5の思想を象徴しています。
現在では、こうした立ち位置の車は市場から姿を消しつつあります。
そのため、BA5は後年になって評価が分かれやすくなりましたが、当時の文脈に戻して見ると、非常に分かりやすいポジションにあった車だと整理できます。
要点まとめ
- BA5はホンダの上級スペシャリティクーペ
- 若年層の“次の一台”として設定された
- スポーツ特化ではなく総合力重視
- 価格・装備ともに明確な格上ポジション
- ラインアップ戦略を象徴する存在だった
この時代のホンダは、車ごとの役割分担がとても丁寧だった印象があります。
BA5は、その中でも「余裕」を担当していた車だったように感じますね。
スポーツカーかデートカーか:評価が分かれる理由

プレリュード BA5 は、「スポーツカーなのか、それともデートカーなのか」という議論が今も続く車です。
この評価の揺れ自体が、BA5の性格をよく表しています。
結論から言えば、BA5はどちらか一方に振り切った車ではなく、両立を狙った結果として評価が分かれたモデル だと整理するのが妥当です。
当時のスポーツカー像を考えると、軽量・FR・シンプル構造といった要素が理想とされがちでした。
その基準で見ると、FFで装備が充実し、車重も抑えきれていないBA5は「純粋なスポーツカーではない」と評価されやすくなります。
一方で、実際の走行性能は同世代の一般的なクーペやセダンより高く、高速域での安定性やコーナリング性能にも配慮されていました。
一方、「デートカー」という評価は、主にデザインと装備から生まれています。
低く構えたボディ、リトラクタブルヘッドライト、当時としては先進的な内装装備は、所有する満足感を重視する層に強く訴求しました。
これは走りを否定するものではなく、「見た目と快適性も重視する」という別の価値観に基づく評価です。
問題は、この2つの価値観が対立的に語られやすかった点にあります。スポーツ性を重視する層からは「中途半端」、快適性を求める層からは「硬派すぎる」と受け取られる場面もありました。
BA5は、どちらの期待にも一定程度応えようとした結果、評価が二分されたと考えられます。
以下は、評価が分かれる主な要因の整理です。
| 観点 | ポジティブ評価 | ネガティブ評価 |
|---|---|---|
| 走行性能 | 安定性・扱いやすさ | 軽快さ不足 |
| デザイン | 洗練・先進性 | 派手すぎる |
| 装備 | 快適・先進 | 重量増加 |
| 駆動方式 | 合理的FF | FRでない |
重要なのは、BA5が「評価に迷う車」ではなく、「狙いが広かった車」だったという点です。
スポーツ専用車のように用途を限定せず、日常と趣味の両立を目指した結果、受け手の価値観によって評価が分かれました。
現代では、車が用途ごとに細分化されているため、BA5のような立ち位置はかえって分かりにくくなっています。
しかし当時の市場環境を踏まえれば、BA5の評価が分かれた理由は、設計の迷いではなく、欲張りな役割設定 にあったと整理できます。
要点まとめ
- BA5はスポーツと快適性の両立を狙った
- 評価基準の違いで印象が分かれやすい
- 純スポーツでも純デートカーでもない
- 中途半端ではなく役割が広かった
- 当時の市場では合理的な選択だった
この車が今も語られるのは、どちらにも寄り切らなかったからかもしれませんね。
資料を眺めていると、「全部ほしい」という当時の空気がそのまま形になったように感じます。
エンジン・駆動方式から見るBA5の思想
プレリュード BA5 を理解するうえで、エンジン構成と駆動方式は避けて通れません。
ここには、当時のホンダがどのように「走り」と「実用性」を両立させようとしていたのか、その思想がはっきり表れています。
BA5は、流行や競争に流されるのではなく、ホンダ独自の合理性を貫いたモデルだと整理できます。
BA5はFF(前輪駆動)レイアウトを採用しています。
当時すでにFRスポーツの価値は広く認識されていましたが、ホンダはFFでも十分に走りを楽しめるという立場を取り続けていました。
エンジン横置きFFは、重量配分やトラクションの面で不利と言われる一方、室内空間の確保や直進安定性、高速巡航時の安心感といったメリットもあります。
BA5は、これらの利点を活かす方向で設計されています。
搭載されたエンジンは、当時のホンダを象徴するDOHCエンジン群です。
高回転域までスムーズに回る特性は、派手な加速力よりも「気持ちよく回す楽しさ」を重視した設計思想を感じさせます。
これは、短時間の刺激よりも、日常的に付き合える快感を大切にするという考え方に基づいています。
また、BA5では4WS(四輪操舵)システムを備える仕様も設定されました。
これは単なる技術アピールではなく、FFレイアウトの弱点とされがちな旋回性や取り回しを補うための試みです。
低速域では取り回しを、高速域では安定性を高めるという思想は、プレリュードが「扱いやすさ」を重要視していたことを示しています。
以下は、BA5のエンジン・駆動方式に見られる思想の整理です。
| 要素 | 採用内容 | そこから読み取れる思想 |
|---|---|---|
| 駆動方式 | FF | 合理性・安定性重視 |
| エンジン | DOHC | 回す楽しさ |
| 技術 | 4WS | 扱いやすさの追求 |
| 全体設計 | バランス型 | 日常と趣味の両立 |
BA5は、サーキットでの速さを最優先する車ではありません。
その代わり、「誰が乗っても一定以上の楽しさを感じられる」ことを目指していました。
エンジンの特性、駆動方式、先進技術の組み合わせは、その目的に沿った選択だったと考えられます。
現代の視点で見ると、この思想はやや中庸に映るかもしれません。
しかし当時としては、非常に野心的で、ホンダらしい一貫性のあるアプローチでした。
BA5は、スペック競争よりも「使われ方」を重視したクーペだったと言えます。
要点まとめ
- BA5はFFレイアウトを合理的に選択
- 高回転型DOHCで走る楽しさを重視
- 4WSは扱いやすさ向上のための技術
- サーキット特化ではない思想
- 日常と趣味の両立を狙った設計
この世代のホンダ車を見ていると、「理屈で考えた楽しさ」を大切にしていた印象があります。
BA5も、数字より体感を重視した車だったのかもしれませんね。
デザインと装備が示すターゲット層

プレリュード BA5 を見たとき、多くの人が最初に受け取る印象は「低く、ワイドで、当時としてはかなり先進的」というものです。
このデザインと装備の方向性は偶然ではなく、明確なターゲット層を想定した結果 だと読み取れます。
BA5は“誰にでも向けたクーペ”ではありませんでした。
まずエクステリアです。リトラクタブルヘッドライト、フラッシュサーフェスを意識したボディライン、伸びやかなサイドシルエットは、1980年代後半の空気感を色濃く反映しています。
これは実用一辺倒のデザインではなく、「所有すること自体に価値を感じる層」を意識した造形。
単に速そうに見せるのではなく、都会的で洗練された印象を与えることが重視されていました。
インテリアに目を向けると、その狙いはさらに明確になります。
ドライバー中心のレイアウト、視認性を意識したメーターデザイン、質感に配慮した内装素材など、日常的に乗ることを前提とした快適性が追求されています。
スポーツ専用車のような簡素さはなく、長時間の移動でも疲れにくい環境づくりが意識されていました。
装備面では、当時としては先進的な機能が積極的に採用されています。
4WSをはじめとする技術的特徴だけでなく、快適装備や電装系の充実は、「若くして社会的に安定し始めた層」を強く意識したもの。
シンプルで軽量な車を好む層よりも、走りも快適性も“不足なく”欲しい層 が明確なターゲットでした。
以下は、デザインと装備から読み取れるターゲット像の整理です。
| 要素 | 特徴 | 想定ターゲット |
|---|---|---|
| 外観 | 低くワイド | 都会志向 |
| 内装 | 快適・上質 | 中堅層 |
| 装備 | 先進技術 | 技術志向 |
| 全体像 | バランス型 | 余裕ある選択 |
重要なのは、BA5が「若者向けの派手なクーペ」でも「保守的な大人の車」でもなかった点。
両者の中間に位置し、背伸びではなく“自然なステップアップ”として選ばれること を狙っていました。
このため、評価は穏やかで、熱狂的なファン層と距離がある一方、一定の支持を長く得る構造になっていました。
現代では、こうした立ち位置の車は市場からほぼ消えています。
そのため、BA5のデザインや装備は、当時の価値観をそのまま伝える資料的な意味合いも持つようになりました。
プレリュード BA5 は、時代が求めた“ちょうどいい上質さ”を形にしたクーペだったと整理できます。
要点まとめ
- BA5のデザインは所有満足感重視
- 内装・装備は日常使用前提
- 若年層より中堅層を想定
- 先進技術は実用性のため
- ステップアップ層向けの車種だった
この時代のクーペは、見た目だけでなく「どう使われるか」を強く意識していたように感じます。
BA5の佇まいには、当時の余裕や自信のようなものがにじんでいますね。
現代視点で見たBA5の価値と再評価ポイント

プレリュード BA5 を現代の視点で見直すと、その価値は「当時の評価の延長線上」ではなく、時代が変わったからこそ浮かび上がってきた要素 によって再整理されていることが分かります。
性能競争が激化し、車の役割が細分化された現在において、BA5の立ち位置はむしろ分かりやすくなっています。
まず、BA5の再評価ポイントとして大きいのが「総合バランスの良さ」。
現代車のような突出したスペックはありませんが、走行性能・快適性・デザイン・実用性が高い次元で破綻なくまとまっています。
これは当時は当たり前とされがちでしたが、尖ったキャラクターの車が増えた今だからこそ、貴重な特性として認識されるようになりました。
次に、FFクーペという成り立ちです。現在、国産FFクーペはほぼ姿を消しており、BA5は「ホンダが本気で作ったFFスペシャリティクーペ」の代表例として見られるようになっています。
FRかFFかという単純な優劣ではなく、FFでどう完成度を高めたか という技術的・思想的な評価がしやすくなりました。
さらに、デザインの評価も変化しています。
登場当時はトレンド色が強かったリトラクタブルヘッドライトや低いフォルムは、現代では明確な“時代性”として受け取られます。
これは古さではなく、「その時代を象徴する記号」としての価値。
結果として、状態の良い個体ほど資料性・保存価値が高く見られる傾向があります。
以下は、現代視点で整理したBA5の再評価ポイントです。
| 観点 | 現代での評価 |
|---|---|
| 性格 | バランス型クーペ |
| 駆動方式 | FF完成形の一例 |
| デザイン | 時代を象徴する造形 |
| 位置付け | 今は存在しないジャンル |
| 所有価値 | 理解者向け |
一方で、万人向けでない点も明確です。
最新の快適装備や安全性を求める層、刺激的な走りを最優先する層には向きません。
BA5の価値は、「当時の思想を理解し、その延長として楽しめるかどうか」に大きく左右されます。
現代でBA5を選ぶということは、単に古いクーペを所有することではなく、1980年代後半のホンダが提示した一つの答えを、今あらためて受け取ること だと言えます。
要点まとめ
- BA5は総合バランス型クーペとして再評価
- FFクーペの完成度が見直されている
- デザインは時代性そのものが価値
- 今は存在しないジャンルの車
- 理解して選ぶ人向けの存在
今の基準で測ると物足りない部分もありますが、その“ちょうどよさ”こそが、この車の本質なのかもしれません。
資料を追うほど、当時のホンダの落ち着いた自信が伝わってくる気がします。
よくある質問

Q1. プレリュード BA5 はスポーツカーですか?
定義次第ですが、純粋なスポーツ専用車ではありません。
走行性能と快適性を両立させたスペシャリティクーペと捉えるのが現実的です。
Q2. 当時の評価は高かったのですか?
販売面では一定の支持がありましたが、評価は一様ではありません。
役割が広かった分、受け取り方に差がありました。
Q3. なぜ評価が分かれるのですか?
スポーツ性と快適性の両立を狙ったため、どちらか一方を重視する層からは中途半端に見えたことが理由です。
Q4. 現代で乗るのは現実的ですか?
可能ですが、快適性や安全性は現代車とは異なります。
用途を限定した付き合い方が現実的です。
Q5. FFであることは欠点ですか?
欠点ではありませんが、好みが分かれる点です。
FFで完成度を高めるという思想を理解できるかが重要です。
Q6. 後継モデルと比べてどうですか?
後年のモデルはよりスポーティ方向に進みました。
BA5は比較的穏やかな性格です。
Q7. 初めての旧車として向いていますか?
旧車特有の管理を理解できるなら可能ですが、手軽さを求める場合は不向きです。
Q8. どんな人に向いていますか?
当時のホンダの思想やデザインを含めて楽しめる人に向いています。
まとめ
プレリュード BA5 は、1980年代後半のホンダが提示した「上質で走れるFFクーペ」という一つの完成形でした。
スポーツカーでもデートカーでもない曖昧さは、裏を返せば役割の広さであり、当時の市場では合理的な選択だったと言えます。
現代では同じ立ち位置の車が存在しないため、BA5は過去の中途半端な存在ではなく、「今では作られなくなった価値観を持つ車」として再評価されつつあります。
性能や利便性では測れない背景を理解したうえで向き合える人にとって、BA5は今も静かな魅力を放つ存在だと言えるでしょう。