4代目アコード(CB系)の中でも、「CB3のSiとEXの違い」は、現在でも混同されやすいテーマです。
どちらも上位グレードとして語られることが多い一方で、その性格や狙いは同一ではありません。
Siはホンダらしい走り志向を色濃く反映したグレードであり、EXは快適性や装備の充実を重視した上級仕様として整理されます。
新車当時は装備表やカタログコピーで理解できた違いも、現代では経年劣化や個体差によって見えにくくなっています。
実際に検討する際は、エンジンや足回りだけでなく、内装仕様、装備構成、維持や修復の現実まで含めて比較する必要があります。
本記事では一次資料を軸に、不明点は不明と明記しながら、CB3におけるSiとEXの違いを整理し、「今どちらを選ぶ意味があるのか」を冷静に掘り下げていきます。
Contents
アコード CB3におけるSi/EXグレードの基本的な位置づけ

まず大前提として、CB3のSiとEXは「同じ上位グレードの好み違い」ではありません。
新車当時のカタログ上でも、両者は明確に役割を分けて設定されています。
Si:ホンダの「走り志向」を担うグレード
Siは、CB3ラインの中で走行性能・ドライバーの操作感を重視したグレードとして位置づけられていました。
当時のホンダは、量販セダンであっても「運転の楽しさ」を失わないことを強く意識しており、Siはその思想を最も分かりやすく表現する存在です。
- 走りを意識した仕様設定
- 操舵・足回りの感触を重視
- 装備は必要十分に抑える方向
つまりSiは、CB3という実用セダンの中で“運転する人が主役”になる仕様として整理できます。
EX:快適性と上質感を重視した上級仕様
一方EXは、快適性・装備の充実・上質感を重視したグレードです。
Siが「走り」を軸にするのに対し、EXは「乗る時間の質」を高める方向で設定されています。
- 内装や装備の充実
- 落ち着いた乗り味の志向
- 同乗者の快適性も重視
EXは、**CB3を“上級セダン的に使うための選択肢”**と言えます。
必ずしもスポーティさを求めない層に向けた整理です。
上下関係ではなく「思想の違い」
重要なのは、SiがEXより格下/格上という関係ではないという点です。
両者は価格帯や装備構成こそ違えど、目指している方向性が異なります。
立ち位置の整理表
| 観点 | Si | EX |
|---|---|---|
| 主な狙い | 走行性能・操作感 | 快適性・上質感 |
| 性格 | ドライバー主体 | 乗員全体重視 |
| 装備の考え方 | 必要十分 | 充実・快適 |
| 想定ユーザー | 運転好き | 落ち着いた使い方 |
この整理を押さえておくと、後の比較(走行感・装備・維持)でズレにくくなります。
現代で考えるための前提
現代では、Si/EXの違いはカタログ通りに残っていない個体も多いのが現実です。
- 足回りが交換されている
- 内装が別グレード由来になっている
- 装備が正常に動いていない
そのため、「元々どんな思想のグレードか」を理解したうえで現車を見ることが重要になります。
要点まとめ
- Siは走り志向、EXは快適志向
- 上下関係ではなく役割分担
- Siはドライバー主体、EXは乗員重視
- 現代では思想理解が判断材料になる
資料を整理していくと、Siは「ホンダらしさを楽しむ選択」、EXは「CB3を落ち着いて使う選択」という対比がはっきり見えてきます。
まずはこの立ち位置を押さえておくと、後の違いが理解しやすくなりますね。
アコード CB3 Si/EX スペック比較表
基本スペック(共通項目中心)
| 項目 | Si | EX |
|---|---|---|
| 車名 | ホンダ アコード | ホンダ アコード |
| 世代 | 4代目(CB系) | 4代目(CB系) |
| 型式 | CB3 | CB3 |
| ボディ形状 | 4ドアセダン | 4ドアセダン |
| 駆動方式 | FF | FF |
| エンジン形式 | 直列4気筒 DOHC | 直列4気筒 DOHC |
| 排気量 | 2.0Lクラス | 2.0Lクラス |
| 燃料供給方式 | PGM-FI | PGM-FI |
| トランスミッション | MT / AT(年式・仕様差あり) | AT中心(年式・仕様差あり) |
| サスペンション(前) | ダブルウィッシュボーン | ダブルウィッシュボーン |
| サスペンション(後) | ダブルウィッシュボーン | ダブルウィッシュボーン |
| ブレーキ | 前後ディスク | 前後ディスク |
| パワーステアリング | 標準 | 標準 |
グレード思想・性格の違い
| 観点 | Si | EX |
|---|---|---|
| グレードの位置づけ | 走行性能・操作感重視 | 快適性・上質感重視 |
| 主なターゲット | 運転を楽しみたい人 | 落ち着いた移動を重視する人 |
| 足回りの方向性 | 応答性を意識 | 乗り心地・安定性を意識 |
| 走行感の特徴 | 操作に対して素直 | マイルドで穏やか |
| 内装の考え方 | 機能優先・シンプル | 質感・快適装備重視 |
| 同乗者への配慮 | 必要最低限 | 重視 |
装備・維持面の整理
| 観点 | Si | EX |
|---|---|---|
| 装備点数 | 抑えめ | 多め |
| 経年後の成立条件 | 走行系が健全なら成立しやすい | 装備が正常に動いてこそ成立 |
| 維持の読みやすさ | 比較的高い | 個体差が大きい |
| 割り切り運用 | しやすい | しにくい |
| 修復・復元の難易度 | 比較的低い | 高めになりやすい |
4WS(四輪操舵)についての注意点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 4WS設定 | Si/EXどちらにも設定あり |
| グレード専用装備 | 4WSはグレード専用ではない |
| 現代での重要点 | 有無より「正常動作しているか」が最重要 |
※年式・仕様・販売時期により、装備や設定が異なる場合があります。
※現車判断では、スペックよりもコンディションを最優先してください。
エンジン・足回り・走行感の違い

Si/EXの違いが最も分かりやすく表れるのが、走行時の感触と足回りの方向性です。
ここでは数値の断定を避け、当時の設計思想と構成から読み取れる範囲で整理します。
Si:応答性と一体感を優先した走り
Siは、アクセル操作・操舵入力に対する反応の分かりやすさを重視した味付けです。
エンジン自体は同系統でも、スロットルレスポンスや足回りのセッティングが「ドライバー主体」に寄せられています。
体感としては、
- 操作に対して車が素直に反応する
- ロールの出方が分かりやすい
- 速度域を問わず“操っている感覚”がある
といった方向性。決して硬派すぎるわけではありませんが、運転の情報量が多いのがSiの特徴です。
EX:安定感と快適性を重視した走り
EXは、走行中の落ち着きと同乗者の快適性を重視したセッティングです。
路面からの入力を穏やかにいなし、長時間の運転でも疲れにくい方向に振られています。
体感としては、
- 直進時の安定感が高い
- 段差の収まりが穏やか
- 操作に対する反応はマイルド
という印象。**“車に任せて走れる”**感覚が強く、日常使用では安心感につながります。
足回りセッティングの考え方の差
SiとEXの差は、単なる硬い/柔らかいではなく、何を優先したかの違いです。
| 観点 | Si | EX |
|---|---|---|
| 応答性 | 高め | 穏やか |
| ロール感 | 分かりやすい | いなし重視 |
| 直進安定性 | 良好 | より重視 |
| 体感の方向 | 操る楽しさ | 乗る快適さ |
このため、同じ道を走っても印象が変わりやすいのがSi/EXの違いです。
現代で注意すべきポイント
現代では、足回りが純正状態を保っていない個体も多く、
- ショックが社外品
- スプリングが変更されている
- ブッシュ類が劣化している
といったケースが珍しくありません。
そのため、「Siらしい/EXらしい走行感」がそのまま残っているとは限らず、現車の状態確認が最優先になります。
要点まとめ
- Siは応答性と操作感を重視
- EXは安定感と快適性を重視
- 違いは“硬さ”より思想
- 現代では足回り状態が体感を左右
整理していくと、Siは「運転を楽しむための味付け」、EXは「移動の質を高める味付け」と言えます。
どちらが正解という話ではなく、どんな走りを心地よいと感じるかで評価が分かれそうですね。
内外装・装備内容の差とグレード思想
Si/EXの違いは、走行感以上に内外装と装備の考え方に明確に表れます。
ここを誤解すると、「思っていたCB3と違う」というズレが起きやすくなります。
Si:機能優先・情報量を重視した内装
Siは、ドライバーが状況を把握しやすいことを重視した内装思想です。
派手さよりも操作性と視認性が優先され、装備は必要十分に整理されています。
- 操作系がシンプルで迷いにくい
- メーターやスイッチ配置が直感的
- 装備点数を増やしすぎない構成
結果として、Siの内装は**「使っていて邪魔にならない」**方向にまとまっています。
走りを楽しむ上で不要な要素を極力増やさない、という考え方が見て取れます。
EX:上質感と快適装備を前提にした内装
EXは、乗る時間の質を高めることを明確に意識した内装です。
Siと比べると、装備点数や仕立ての違いが分かりやすくなります。
- 内装材の質感重視
- 快適装備の充実
- 同乗者の満足度を考慮した構成
EXは、CB3を“落ち着いた上級セダン”として使うための内装と整理できます。
日常使いだけでなく、長距離移動や同乗者を乗せる場面を想定した思想です。
外装・雰囲気の違い
外装については、派手な違いは少ないものの、全体の雰囲気に差が出ます。
- Si:引き締まった印象、実用本位
- EX:落ち着きと上質感を意識
ただし、現代では全塗装・補修・部品交換によって差が薄れている個体も多く、外観だけでの判断は危険です。
現代で最も注意すべきポイント
最大の注意点は、内装や装備が「本来のグレード通りに残っていない」個体が多いことです。
- シートが他グレード由来
- スイッチ類が欠品・不動
- 快適装備が正常に動かない
特にEXは、装備が動いてこそ価値が成立します。
装備不動のEXは、思想的にも中途半端になりやすい点に注意が必要です。
要点まとめ
- Siは操作性・機能優先の内装
- EXは上質感・快適性重視
- 外観差より内装思想の差が大きい
- 現代では装備の作動確認が最重要
資料と現車の傾向を整理すると、Siは「余計なものを足さない考え方」、EXは「快適性を積み上げる考え方」がはっきり分かれています。
見た目以上に、使い方で評価が変わる差と言えそうですね。
維持・修復・経年後の現実的な違い

Si/EXの違いは、年数を重ねた現在では維持と修復の現実として表れやすくなっています。
新車当時の装備差は魅力でもあり、同時に“負担”にもなり得ます。
Si:シンプルさがそのまま維持のしやすさに直結
Siは装備構成が比較的シンプルなため、経年後の維持が読みやすい傾向があります。
劣化の中心は足回りやゴム部品など、旧車として一般的な範囲に収まりやすいのが特徴です。
- サスペンションブッシュの硬化
- マウント類の劣化
- 内装パネルのビビり
これらは症状と原因の対応関係が分かりやすく、段階的な整備計画を立てやすいのがSiの強みです。
「完璧でなくても走らせられる」余地が残る点も、現代では大きなメリットになります。
EX:快適装備が“価値”にも“リスク”にもなる
EXは、快適装備や内装の仕立てが価値の源泉である一方、それらが正常に機能しているかどうかが満足度を大きく左右します。
- 電装・快適装備の不動
- 内装材の劣化や欠品
- 部品単位での交換が必要になるケース
装備がきちんと生きていればEXらしさは際立ちますが、不動や欠品が多いと、グレード思想そのものが成立しにくくなる点に注意が必要です。
修復・復元の考え方の違い
修復や復元を考える場合、
- Si:機能回復を優先しやすい
- EX:装備の再生まで含めるとハードルが上がる
という違いが出ます。
EXは「直す=元の快適性を取り戻す」ことを意味するため、部品の有無と状態が計画に大きく影響します。
維持スタンスの整理
| 観点 | Si | EX |
|---|---|---|
| 劣化の中心 | 機械・ゴム部品 | 装備・内装 |
| 維持の読みやすさ | 高い | 個体依存 |
| 割り切り運用 | しやすい | しにくい |
| 復元難易度 | 比較的低い | 高め |
要点まとめ
- Siはシンプルで維持計画を立てやすい
- EXは装備が価値とリスクの両面を持つ
- 修復難易度はEXのほうが高くなりやすい
- 現代では「割り切り力」が差になる
整理していくと、Siは「走らせ続ける現実性に強いグレード」、EXは「状態が良いほど魅力が増すグレード」と言えます。
どちらが向いているかは、どこまで手を掛けたいかで評価が分かれそうですね。
現代で選ぶならSiとEX、どちらが向いているか
ここまで整理してきた内容を踏まえると、CB3のSiとEXは「どちらが上か」では判断できません。
現代で重要なのは、自分がどんな関わり方をしたいかです。
Siが向いている人
Siは、CB3という車の“素の良さ”を楽しみたい人に向いています。
構造が比較的シンプルで、走行感も分かりやすく、現代の環境でも扱いやすいのが強みです。
- 運転そのものを楽しみたい
- 車の反応を自分で感じ取りたい
- 維持や整備を現実的な範囲で考えたい
- 多少の割り切りも受け入れられる
この条件に当てはまるなら、Siは所有ストレスが少なく、満足度を維持しやすい選択になります。
結果として「長く付き合えるCB3」になりやすいのもSiです。
EXが向いている人
EXは、CB3を“落ち着いた上級セダン”として使いたい人に向いています。
快適装備や内装の仕立てが生きている個体であれば、今でも移動の質は高く保たれます。
- 走りより快適性を重視
- 同乗者を乗せる機会が多い
- 装備の状態をしっかり確認できる
- 良い個体を時間をかけて探せる
こうした条件を満たせる場合、EXはCB3の別の魅力を引き出せる選択肢になります。
ただし、状態が悪いと価値が成立しにくい点は理解が必要です。
最終判断で共通して重要なこと
Si/EXどちらを選ぶ場合でも、最終的に重視すべき点は共通しています。
- 現車のコンディション
- 装備・機構が正常に機能しているか
- 違和感を説明できる整備履歴があるか
グレード名よりも、**目の前の一台が「自分の生活に無理なく合うか」**がすべてです。
要点まとめ
- Siはシンプルで扱いやすい
- EXは快適性が生きていれば魅力的
- 優劣ではなく使い方で選ぶ
- 最終判断は必ず個体状態優先
整理すると、Siは「現実的に長く付き合えるCB3」、EXは「条件が揃えば満足度が高いCB3」と言えます。
どちらも間違いではなく、自分の関わり方次第で評価が変わるグレードですね。
よくある質問

Q1. アコード CB3のSiとEX、どちらが上位グレードですか?
単純な上下関係はありません。
Siは走行性能や操作感を重視したグレード、EXは快適性や装備の充実を重視したグレードという役割分担です。
方向性が異なるだけで、格の上下ではありません。
Q2. 走りを楽しみたいならSiを選ぶべきですか?
一般論ではSiが向いています。
ステアリング操作に対する反応が分かりやすく、ドライバー主体の走行感を重視した思想で設定されています。
ただし、現代では足回りの状態が走行感を大きく左右します。
Q3. EXは運転がつまらない車ですか?
そうではありません。EXは運転の刺激よりも、直進安定性や乗り心地を重視しています。長距離移動や同乗者を乗せる場面では、EXの落ち着いた性格がメリットになります。
Q4. SiとEXでエンジン性能に大きな違いはありますか?
基本的には同系統のエンジンが搭載されています。
体感差はエンジン性能そのものより、足回りやセッティング思想によるものが大きいです。
Q5. 中古で買うなら、どちらが失敗しにくいですか?
一般論ではSiのほうが失敗しにくい傾向があります。
装備構成がシンプルなため、経年劣化による影響を把握しやすいからです。
ただし、最終的には個体状態がすべてです。
Q6. EXは装備が壊れていると価値が下がりますか?
はい。
EXは快適装備や内装の質感が価値の中心になるため、装備が正常に動かない個体ではグレードの魅力が成立しにくくなります。
Q7. Siに快適装備はほとんど無いのですか?
必要最低限の装備は備わっています。
ただし、EXと比べると装備点数は控えめで、豪華さや上質感を求める人には物足りなく感じる場合があります。
Q8. Si/EXで維持費に大きな差は出ますか?
日常的な維持費に大きな差は出にくいですが、EXは装備修理が発生すると費用がかさむ可能性があります。
Siは走行系中心の整備になるケースが多いです。
Q9. SiとEX、どちらが長く乗りやすいですか?
割り切って使える人にとってはSiのほうが長く乗りやすい傾向があります。
EXは状態が良ければ快適ですが、コンディション維持が前提になります。
Q10. 最終的にどちらを選ぶべきか迷った場合は?
グレード名よりも「現車の状態」と「自分の使い方」を優先してください。
走りを楽しみたいならSi、快適性を重視するならEXという判断軸を持ちつつ、コンディションの良い個体を選ぶことが最も重要です。
まとめ
アコード CB3のSiとEXは、同じ車種・同じ世代でありながら、目指している方向性がはっきり異なるグレード。
Siはホンダらしい走行性能や操作感を重視した仕様で、ドライバーが車を操る感覚を楽しみたい人に向いています。
一方EXは、快適性や内装の質感、装備の充実度を重視したグレードで、落ち着いた移動や同乗者の快適さを大切にする人に適した選択肢です。
現代で検討する場合、新車当時のグレードイメージがそのまま残っているとは限りません。
足回りの交換や内装の入れ替え、装備の不動などにより、Siらしさ・EXらしさが薄れている個体も多く見られます。
そのため、グレード名だけで判断するのではなく、現車のコンディションや装備の作動状況を最優先で確認することが重要。
維持のしやすさという観点では、装備構成が比較的シンプルなSiのほうが計画を立てやすい傾向があります。
EXは、快適装備が正常に機能してこそ魅力が成立するため、状態の良し悪しによる満足度の差が大きくなりやすい点を理解しておく必要があります。
最終的には、「走りを楽しみたいか」「快適性を重視したいか」という使い方の軸と、目の前にある一台の状態が判断基準になります。
SiとEXのどちらが正解ということはなく、自分のライフスタイルや維持スタンスに無理なく合う一台を選ぶことが、CB3と長く付き合うための最も現実的な答えと言えるでしょう。