1972年に登場したホンダの初代シビック(Civic SB型)は、日本のみならず世界の自動車市場において重要な転機となるモデルでした。
その成功の背景にあるのが、1970年代の排ガス規制(マスキー法)に対応すべく開発されたCVCCエンジンの存在です。
この記事では、初代シビックの基本構造・CVCCエンジンの構造と画期性・他グレードとの違い・排気量・時代背景まで、テクニカル&歴史的視点から詳細に掘り下げて解説します。
初代シビック(SB型)とは?【シンプルかつ革新的なグローバルカー】
項目 | 内容 |
---|---|
型式 | SB1/SB2型(1972年〜1979年) |
ボディ形状 | 2ドアセダン/3ドアハッチバック/ステーションワゴン("シビックバン") |
エンジン形式 | 水冷直列4気筒SOHC |
排気量 | 1169cc(非CVCC)/1488cc(CVCC) |
ミッション | 4MT / 5MT / 2速AT(ホンダマチック) |
駆動方式 | FF(前輪駆動) |
最高出力 | 約50〜80PS(グレードによる) |
乗車定員 | 5名 |
車重 | 約680〜750kg |
シンプルでコンパクト、極めて実用性の高い設計と優れた燃費性能が評価され、アメリカ市場でも爆発的にヒットしました。
CVCCエンジンとは?【世界初の低公害エンジン技術】

CVCCの意味と構造
CVCCとは、**Compound Vortex Controlled Combustion(複合渦流調整燃焼)**の略称。
ホンダが独自に開発した燃焼方式で、「予備燃焼室」を設けることにより、薄い混合気でも安定して燃焼させることができるという画期的な技術です。
CVCCエンジンの仕組み(簡略図解イメージ)
- 燃焼室が主室と副室(予備燃焼室)に分かれている
- 副室内にはリッチな混合気が噴射され、スパークプラグで着火
- 着火した火炎がメイン燃焼室へ拡がり、希薄燃焼が可能に
- 結果的にNOx(窒素酸化物)・HC(炭化水素)・CO(一酸化炭素)の低減を実現
なぜCVCCが革命だったのか?
- 触媒コンバーター不要でマスキー法をクリアした唯一の方式(1970年代)
- トヨタや日産は当時、三元触媒+電子制御(EFI)の開発に苦戦していたが、 ホンダは機械的構造でそれを上回る成果を達成
CVCCが搭載された初代シビック【シビックCVCCモデルとは?】
1975年、初代シビックに搭載されたCVCCエンジン(ED型)は、排気量1488cc、最高出力68〜80PSを発生。
| エンジン型式 | ED型 | | 燃焼方式 | CVCC方式(希薄燃焼) | | 排気量 | 1488cc | | バルブ | 8バルブ(吸気2・排気2/1気筒)+副室側プラグ付き | | 燃費 | 約14〜18km/L(当時実測) | | ミッション | 5速MT or 2速AT | | 輸出対象国 | 主にアメリカ・カナダ |
アメリカ仕様にはエアポンプやEGRなどの排ガス再循環機構も追加されていましたが、 CVCCにより三元触媒の使用を回避できたことが当時の技術的な勝利でした。
CVCCエンジンの開発背景とホンダの哲学

- 創業者・本田宗一郎が「クリーンなエンジンは日本独自の技術で実現すべき」と発言
- アメリカの排ガス規制(マスキー法)に触発され、国内で唯一触媒を使わず合格を果たす
- 技術者たちはエンジンの基礎理論をゼロから再構築。開発期間は約2年
- 「世界に先んじて環境対策を自力でクリアする」ことが社是のように掲げられた
CVCCの欠点と次世代への課題
- エンジン構造が複雑で、製造コストが高い
- 始動性がやや劣る(特に寒冷地)
- 燃焼室が2つあることで調整が難しく、整備士泣かせとされることも
- 結果的に1980年代以降はPGM-FI(電子燃料噴射)へと移行し、CVCCは主流から退くことに
他の関連トピック【読者の関心を広げる情報】

シビックにVTECが搭載されたのはいつから?
- **1989年のEF9型シビックSiR(B16A型エンジン)**がVTEC搭載第1号
- 高回転と低回転でカムプロフィールを切り替える可変バルブ機構
シビックで1番高いのは何ですか?
- **ホンダ シビック Type R(FK8/FL5型)**は新車価格約500万円超(2023年時点)
- 限定車やレース仕様(シビックR3など)はプレミア価格
ホンダのSiとはどういう意味ですか?
- **Sports Injection(スポーツインジェクション)**の略
- キャブレターから電子燃料噴射(PGM-FI)へ移行したスポーティグレード名
初代シビックの排気量は?
- 日本仕様:1169cc(初期モデル)
- CVCC搭載車:1488cc
まとめ:初代シビックとCVCCは世界の排ガス規制を乗り越えた「技術の回答」
✅ CVCCエンジンは“触媒なしでクリーンを達成”した唯一無二の燃焼技術
✅ 初代シビックはコンパクト・高燃費・整備性の三拍子を実現した元祖グローバルカー
✅ CVCCがホンダを世界に認知させ、のちのVTEC・i-MMD開発の土台となった
✅ エンジンメカとしての完成度、環境技術としての先進性の両面から今なお評価される一台
「ただ走る」から、「環境と走る」へ──CVCCとシビックはその進化の起点に立っていました。