1960年代後半、トヨタは2つの高級車を同時に展開していました。
一方は“国民的高級車”としてのクラウンMS50、もう一方は“社長専用車”を志向したクラウンエイト。
同じ「クラウン」の名を持ちながら、その立ち位置と開発思想は大きく異なります。
この記事では、両車のデザイン・構造・走行性能・市場評価の違いを一次資料に基づいて詳しく比較していきます。
開発背景と狙いの違い

クラウンMS50:大衆が憧れる“高級車”
MS50は、クラウンシリーズ第4世代(1967〜1971年)として開発。
排ガス規制や経済成長に伴い、**「一般ユーザーが所有できる高級車」**という方向を明確に打ち出しました。
車格は全長約4.7m・直列6気筒2.0LのM型エンジンを搭載。
この世代からボディ剛性・静粛性が大幅に向上し、“誰もが乗れる上質車”を目指したトヨタの回答といえます。
当時のキャッチコピーは「日本の道を知り尽くしたクラウン」。
まさに国民車的な高級車としてのポジションを確立していました。
クラウンエイト:トヨタの“社長専用車”構想
一方のクラウンエイト(VG10型/1964〜1967年)は、クラウンシリーズの延長線ではなく、トヨタ初の本格V8高級車として開発された異色の存在です。
当時の日本には“センチュリー”がまだ存在せず、クラウンエイトがその原点。
搭載エンジンはV型8気筒 2.6L(3V型)、ボディは全長約4.9m。
価格は当時のクラウンMS40型の約1.5倍という超高級モデルで、主な購入層は企業経営者や政府要人クラスでした。
クラウンMS50が「高級車の普及化」を目指したのに対し、クラウンエイトは「最高級車の国産化」を目指したトヨタの挑戦。
この開発思想の差こそ、両車の根本的な違いといえます。
| 比較項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト(VG10) |
|---|---|---|
| 開発目的 | 普及型高級車 | 国産最高級車 |
| 生産期間 | 1967〜1971 | 1964〜1967 |
| エンジン | 直6・2.0L M型 | V8・2.6L 3V型 |
| 全長 | 約4,700mm | 約4,900mm |
| 価格(当時) | 約120万円〜 | 約180万円〜 |
| 販売対象 | 法人・一般層 | 経営者・官公庁 |
| 後継モデル | MS60クラウン | センチュリーVG20 |
時代背景とトヨタの戦略
トヨタはこの2車を通して、日本の自動車市場の**「高級車の階層化」**を試みました。
MS50は“上質な日常”、エイトは“象徴的な存在”という二極化。
この戦略は後に「クラウン=プレミアム大衆車」「センチュリー=象徴的高級車」というトヨタのブランド構造へと進化していきます。
要点まとめ
- MS50=一般層向けの高級セダン。
- クラウンエイト=V8エンジンを搭載した最高級専用車。
- トヨタの「国産高級車文化」はここから始まった。
この2台を並べると、まるで“クラウンの兄と弟”。
MS50の均整の取れた姿もいいけど、クラウンエイトの重厚なフロントフェイスは、やはり別格の風格がありますよね。
外観デザインと車格の差

フロントマスクの印象
クラウンMS50とクラウンエイトを並べてみると、まず目に飛び込むのはフロントフェイスの存在感の差です。
MS50は当時のトヨタらしい整然としたデザインで、横桟グリルと丸型ヘッドライトを採用。
全体的に「理性的で上品」な印象を与える造形です。
対してクラウンエイトは、大型クロームグリルと縦型ダブルヘッドライトを採用し、クラウンよりも一回り大きなボディで堂々とした構え。
このデザインは、当時のアメリカ車(特にリンカーンやキャデラック)を強く意識したもので、“社長車=ステータス”というメッセージが明確に伝わります。
| 比較項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト |
|---|---|---|
| ヘッドライト | 丸型2灯(横配置) | 縦型4灯(2段構成) |
| グリル | 横桟クローム | 大型縦格子クローム |
| ボンネット | やや短く軽快 | 長く重厚 |
| 全幅 | 約1690mm | 約1770mm |
| 雰囲気 | 上品・理性的 | 威厳・象徴的 |
クラウンMS50が「高級車としての親しみ」を追求したのに対し、クラウンエイトは「高級車とは威厳である」という哲学を貫いたモデルでした。
ボディプロポーションとサイズ感
クラウンエイトの全長は約4.9mで、クラウンMS50より約20cm長く、全高もやや低く設定。
この差はカタログ数値以上に視覚的な迫力があります。
ホイールベースもエイトが100mm長く、後席の居住性が格段に向上。
MS50は街中での取り回しやすさを重視し、ボディラインが直線的で軽快。
対してエイトは後席ドアが大きく、Cピラーが極端に太い——
まさに“要人のプライバシーを守る”設計です。
| 比較項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト |
|---|---|---|
| 全長 | 4,705mm | 4,900mm |
| 全幅 | 1,690mm | 1,770mm |
| 全高 | 1,460mm | 1,470mm |
| ホイールベース | 2,690mm | 2,790mm |
| 車重 | 約1,360kg | 約1,580kg |
クラウンMS50が“乗る人のための高級車”なら、クラウンエイトは“乗せる人のための高級車”といえるでしょう。
リアデザインと象徴性
MS50のリアは直線的で、横長テールランプとメッキバンパーの組み合わせ。
シンプルながら完成度が高く、後のクラウン(MS60・MS70)にも通じる伝統的デザインです。
一方でクラウンエイトは、大型の一文字テールランプと重厚なリアガーニッシュを採用。
リアウィンドウが寝かされ、トランクラインが長く取られているため、まるでアメリカン・リムジンのような雰囲気を放ちます。
この“威厳の造形”こそが後のセンチュリーに引き継がれ、「クラウンエイト=センチュリーの原型」と言われるゆえんです。
要点まとめ
- MS50は上品でコンパクト、エイトは威厳ある大型ボディ。
- エイトの縦4灯ライトはセンチュリーへと受け継がれた。
- 両車の佇まいの差は「高級車の定義」の違いそのもの。
クラウンMS50が“街で映える高級車”なら、クラウンエイトは“玄関前で待つ車”。
同じクラウンの名を持ちながら、用途と思想がまるで違うんです。
エンジン・走行性能の比較

エンジン構成の違い
クラウンMS50には、当時トヨタが誇る**直列6気筒M型エンジン(1988cc)**が搭載されていました。
このエンジンはスムーズな回転特性と静粛性を両立しており、「国産初の本格的直6」として知られています。
最高出力は約110PS/5200rpm、トルクは16kgm前後。
街乗りから高速走行まで素直に回り、まさに“乗る人が疲れない上品な高級車”を支えた名機でした。
対するクラウンエイトは、**国産車初のV型8気筒 3V型エンジン(2599cc)**を搭載。
最高出力115PS/4800rpmと数値的には大きな差がないように見えますが、トルクの厚みと静粛性では圧倒的な差を見せます。
アイドリング時の静かさは「乗っていることを忘れる」と言われるほどで、当時の試乗記でも「クラウンMS50は走り、クラウンエイトは流れる」と評されました。
| 比較項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト |
|---|---|---|
| エンジン型式 | M型(直6) | 3V型(V8) |
| 排気量 | 1988cc | 2599cc |
| 最高出力 | 約110PS/5200rpm | 約115PS/4800rpm |
| 最大トルク | 約16kgm | 約20kgm |
| 方式 | SOHC・キャブレター | OHV・ツインキャブ |
| 駆動方式 | FR(後輪駆動) | FR(後輪駆動) |
M型の滑らかさと、3V型の低速トルク。
この2つのエンジンは、トヨタが当時“高級車の心臓”として模索していた方向性の違いを象徴しています。
走行フィールと乗り味の違い
クラウンMS50は、サスペンション前ダブルウィッシュボーン・後リジッドリーフ式。
柔らかすぎず、操縦安定性を重視した設計です。
ステアリングフィールも自然で、軽快なハンドリングを実現していました。
一方、クラウンエイトはより重厚な乗り味。
サスペンションはトーションバー式で、重量級ボディをゆったり支えるような乗り心地が特徴です。
高速直進安定性は高く、当時の日本車では群を抜いていました。
クラウンMS50が「ドライバーズサルーン」なら、クラウンエイトは「リムジンの走り」。
路面の段差や継ぎ目を、まるで絹のようにいなす感覚は、後のセンチュリーにそのまま受け継がれています。
トランスミッションと制御技術
両車ともFR駆動で、トヨタ独自の**トヨグライドAT(2速半自動変速機)**を採用可能。
ただし、クラウンエイトには専用強化型が組み合わされ、静粛性を重視したチューニングが行われていました。
また、エイトには補助オイルクーラーが標準装備されており、高温時の信頼性も高かったことが特徴です。
MS50では手動4速ミッションも人気で、タクシー・官公庁用途では整備性を重視して採用されていました。
実走性能と評価
当時の自動車雑誌『モーターファン』(1966年)では、クラウンMS50が「静粛で滑らかだが、やや軽快志向」、クラウンエイトは「王者の風格。踏み込むたびに余裕がある」と評されています。
加速性能は0→100km/hで
- MS50:約16秒
- クラウンエイト:約14秒
と、重量差を感じさせないトルク特性をエイトが誇っていました。
また、制動面でもエイトはフロントディスクブレーキをいち早く採用しており、MS50よりも一歩先の技術を備えていた点も特筆されます。
要点まとめ
- M型(直6)は軽快、3V型(V8)は静粛で重厚。
- サスペンション設計も異なり、走りのキャラクターが対照的。
- クラウンMS50=運転する楽しさ、クラウンエイト=乗せる贅沢。
クラウンエイトのV8サウンドは、現代のクラウンとはまるで別物。
低速で“ゴロロ…”と響く音が、昭和の重厚な空気をそのまま運んでくるとのこと。
どちらも「静けさ」を追求した名車ですが、その静けさの“質”がまったく違うんですよね。
内装・装備の格差

キャビンの世界観
クラウンMS50の内装は、当時としては非常に上質で洗練されていました。
水平基調のインパネデザインに木目パネルをあしらい、クロームモールを控えめに使用。
トヨタらしい実直な設計で、**“整った高級感”**を演出していました。
シートはモケット地が中心で、オプションでレザー調ビニールが選択可能。
機能的でメンテナンス性にも優れており、まさに「働く高級車」といえる存在でした。
対してクラウンエイトは、まったく異なる世界観を持ちます。
車内は全面ウッドパネル仕上げで、ダッシュボード・ドアトリム・センターコンソールまで重厚感を追求。
ステアリングもウッドコンビ仕様で、シフトノブやメーターリングにまでメッキ装飾が施されています。
座面の厚いベロア調シートは**“椅子”ではなく“ソファ”**のようで、トヨタが「乗せる人の快適性」を最優先した設計思想が読み取れます。
| 比較項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト |
|---|---|---|
| 内装素材 | モケット/レザー調 | 本木目パネル・ベロア地 |
| メーターパネル | 横長水平型 | 丸型独立メーター(クローム縁) |
| ステアリング | 樹脂製2本スポーク | 木目+メッキコンビ |
| シート形状 | フラット・実用的 | 厚みのある独立ソファ風 |
| 室内照明 | ルームランプ中央のみ | 独立読書灯・フットライト付き |
快適装備と電装系の差
MS50の標準装備は、ヒーター・AMラジオ・シガーライター程度で、パワーステアリングやエアコンは上級グレードのみのオプションでした。
対してクラウンエイトは、国産初のエアコン標準搭載車(一部グレード)として知られ、さらに電動アンテナ・リモートミラー・パワーウィンドウまで装備。
室内静粛性も徹底的に追求され、遮音材の厚さがクラウンの約1.5倍に達していました。
このように、MS50が“実用高級車”なら、エイトは“移動する応接室”。
特に後席装備の差は顕著で、クラウンエイトには折り畳み式テーブル・後席ラジオコントローラーなど、当時の国産車では極めて珍しい快適機能が導入されていました。
| 装備項目 | クラウンMS50 | クラウンエイト |
|---|---|---|
| エアコン | オプション | 標準(前後独立吹出口) |
| パワーステアリング | 上位のみ | 標準 |
| パワーウィンドウ | なし | 標準装備 |
| 電動アンテナ | なし | 標準装備 |
| オーディオ | AMラジオ | AM/FM+後席操作可 |
| フロアマット | ナイロン系 | 厚手ウール製 |
後席空間と設計思想
クラウンMS50の後席は広さ重視で、フロアトンネルを低く設計。
頭上空間も十分で、ドライバー付きの法人車として最適な居住性を備えていました。
クラウンエイトはさらに後席優先設計を徹底。
ホイールベースを延長して足元空間を確保し、シートバック角度もより寝かせ気味に設定。
**後席に座ること自体が体験となる“贅沢な静寂空間”**を目指していました。
センチュリーが登場した後も、エイトの後席構造はそのまま引き継がれています。
内装デザインが示した方向性
MS50とエイトの違いは、単なる装備差ではなく、トヨタが「高級車の本質とは何か」を探り始めた時代の分岐を象徴しています。
クラウンMS50は“信頼と上質”の高級車、クラウンエイトは“威厳と静寂”の高級車。
その設計思想の両立が、後にクラウンとセンチュリーという二本の系譜へと進化していきました。
要点まとめ
- 内装の質感はエイトが圧倒的に上。
- 快適装備の充実度もクラウンエイトが先行。
- MS50は実用性重視、エイトは贅沢さと静粛性重視。
クラウンエイトの車内に座ると、まず“時間の流れがゆっくりになるんだそうです。
クロームの輝きも、ウッドの香りも、全部が「これぞトヨタの誇り」って感じ。
でも、MS50の素朴な高級感もやっぱり捨てがたいんですよね。
販売戦略と市場での位置づけ
トヨタが描いた“二層構造の高級車戦略”
1960年代半ば、トヨタは明確に二つの高級車路線を並行展開していました。
ひとつはクラウンMS50に代表される「大衆層が手に届く高級車」、もうひとつはクラウンエイトに象徴される「権威層のための最高級車」。
当時の日本は高度経済成長期。
自家用車が急速に普及する中で、トヨタは「法人ユーザー」と「個人オーナー」の双方を取り込みたいという戦略を持っていました。
クラウンMS50はその中心軸としてトヨペット店を通じて販売され、営業車・役員車・医師・弁護士層に多く採用。
一方のクラウンエイトは完全受注生産制に近く、トヨタ店(上位チャネル)のみで取り扱われました。
結果として、MS50が“走るステータスシンボル”なら、クラウンエイトは“静かに君臨する存在”という明確な棲み分けが成立します。
| 販売チャンネル | 主な車種 | ターゲット層 | 販売形態 |
|---|---|---|---|
| トヨペット店 | クラウンMS50 | 法人・公用車・一般高級層 | 通常販売 |
| トヨタ店 | クラウンエイト | 経営者・要人・富裕層 | 受注販売 |
| 備考 | — | 当時のクラウン販売台数の約3%がエイト系 | — |
広告・ブランディングの違い
クラウンMS50の広告コピーは「信頼のクラウン」「道を知るクルマ」といった堅実な表現が多く、社会的信頼を重んじる層に響くトーンでした。
一方でクラウンエイトの広告には「静粛こそ最高の贅沢」「日本のV8」という言葉が並び、“所有すること自体が地位を象徴する車”というメッセージが強調されていました。
これはトヨタが、クラウンブランドの“象徴性”を二段階で定義しようとした最初の試みであり、後に登場する**センチュリー(VG20)**が「クラウンエイトの正統進化版」とされる理由でもあります。
市場での評価と実績
クラウンMS50は発売直後から大ヒット。
年間販売台数は約3万台を超え、トヨタの主力高級車として完全に定着しました。
一方でクラウンエイトは、1964〜67年の約3年間で生産台数約1200台前後と非常に少数。
しかし、販売台数以上にブランドイメージ形成の役割が大きかった車です。
クラウンエイトを購入した顧客層は、
- 大企業経営者
- 官公庁(知事・議員クラス)
- 外交団体・皇族関連用途
といった限られた層に絞られており、当時は「公用車の頂点」と呼ばれていました。
この高級セダン戦略の“頂点を示す車”としての成功が、後継モデル「センチュリー」(1967年登場)開発の決定打になったのです。
価格差が示すもの
当時のクラウンMS50スーパーデラックスが約120万円前後だったのに対し、クラウンエイトは約180万円〜200万円。
この価格差は、現在の貨幣価値で言えば約250万円以上に相当します。
つまり、クラウンエイトは“クラウンを卒業した人のための車”。
トヨタが国内自動車メーカーとして「高級車文化を根づかせたい」という使命感を込めたモデルでもありました。
現在の市場での位置づけ
今日(2025年)においても、クラウンMS50とクラウンエイトは旧車愛好家の間で明確に別ジャンルとして扱われています。
- MS50:クラウンの伝統的な美学を持つ“普及型旧車”
- クラウンエイト:センチュリーの祖としての“象徴的旧車”
クラウンエイトは現存台数が少なく、レストアベースでも400万円前後、完全レストア済みの極上車は700万円を超えることもあります。
その存在は単なる車ではなく、“トヨタの誇りを体現したプロトタイプ”といえるでしょう。
要点まとめ
- トヨタはMS50とクラウンエイトで明確なターゲットを分けていた。
- MS50=実用高級車、エイト=象徴的最高級車。
- クラウンエイトの登場がセンチュリー誕生の布石となった。
- 現在はクラウンエイトが「幻のトヨタV8車」としてプレミア価値を持つ。
よくある質問(FAQ)

Q1. クラウンエイトとセンチュリーの関係は?
A. クラウンエイトはセンチュリーの直接の先祖です。
1967年にクラウンエイトの開発思想とV8エンジンを継承し、「国産最高級車」としてセンチュリー(VG20)が誕生しました。
つまりクラウンエイトは“センチュリー以前のセンチュリー”といえる存在です。
Q2. クラウンMS50とクラウンエイトはどちらが売れた?
A. 圧倒的にクラウンMS50です。
年間販売台数は約3万台を超え、法人・個人問わず広く普及しました。
一方でクラウンエイトは3年間で約1200台のみ。
ただし、販売台数以上にトヨタの高級車ブランド確立に貢献しました。
Q3. 走りの違いをひとことで表すと?
A. クラウンMS50は“軽快で上品”、クラウンエイトは“重厚で静粛”。
M型直6の滑らかさと、V8の低速トルクの厚み。
どちらも高級車らしい余裕がありますが、方向性がまったく違います。
Q4. 燃費や維持費に差はある?
A. クラウンMS50は平均7〜9km/L前後、クラウンエイトは5〜6km/L前後。
V8エンジンの分、燃費と整備費用は高くなります。
維持費の目安は、MS50で年間約30万円、エイトで約50万円前後です。
Q5. 部品供給や修理の難易度は?
A. クラウンMS50は共通部品が多く比較的維持しやすいですが、クラウンエイトは専用部品が多く、特に3V型V8エンジンの補機類は希少。
専門店やクラシックトヨタ系レストア業者への依頼が必要です。
Q6. 実際に公用車として使われたのは?
A. クラウンエイトです。
官公庁の長官車・知事車・外交団用車として正式採用されました。
クラウンMS50は主に一般企業・法人役員車として使われていました。
Q7. 現存するクラウンエイトはどこで見られる?
A. トヨタ博物館(愛知県長久手市)に保存展示されています。
また、クラシックイベント「トヨタ クラウン生誕70周年展」や「ノスタルジック2デイズ」にも定期的に出展されています。
Q8. 海外では販売された?
A. クラウンMS50は一部輸出されましたが、クラウンエイトは国内専売モデル。
日本の道路環境とVIP用途を前提に設計されたため、輸出計画はありませんでした。
Q9. 旧車イベントで人気が高いのは?
A. 観客人気ではクラウンエイト。
特にボンネットを開けてV8を見せる瞬間は、旧車ファンの注目を集めます。
一方、クラウンMS50は整備性が高く「動態保存車」として参加するオーナーが多いです。
Q10. 今後、どちらが資産価値として伸びる?
A. 短期的にはクラウンエイトが優勢。現存台数が少なく、希少価値が年々上昇中。
しかし長期的には、クラウンMS50も**“初期クラウン系の完成形”**として再評価が進んでおり、良好な個体を維持できるかどうかが今後の価値を左右します。
要点まとめ
- クラウンエイトはセンチュリーの原点、希少性で上。
- クラウンMS50は維持性・実用性で勝る。
- どちらも「国産高級車の夜明け」を象徴する歴史的モデル。
まとめ
クラウンMS50とクラウンエイト——この2台は、トヨタが「高級車とは何か」を模索していた1960年代の象徴的存在です。
クラウンMS50は、国民の手に届く高級車として誕生し、静粛性・信頼性・品質の高さで“クラウン神話”を確立しました。
一方のクラウンエイトは、トヨタが初めて本格的に挑んだV8エンジン搭載の国産最高級車。
センチュリーへと続く系譜の原点であり、「威厳」という言葉がぴったりの車です。
両者の違いは単なるスペックの差ではなく、哲学の違い。
MS50が「乗る人のためのクラウン」なら、エイトは「乗せる人のためのクラウン」。
その二つの思想が交差した結果、トヨタの高級車文化が確立し、今日のクラウン、そしてセンチュリーへと繋がっています。
いま見ても、両車には昭和の日本が夢見た“豊かさ”と“誇り”が凝縮されています。
それは数字では語れない、時代の空気そのものです。
要点まとめ
- クラウンMS50=普及型高級車の完成形。
- クラウンエイト=国産最高級車の原点。
- 二つのクラウンが、トヨタのブランド構築を支えた。
- 現代のクラウンやセンチュリーも、この時代の思想を継承している。
クラウンMS50のM型エンジンの音を聴きながら、クラウンエイトのV8を思い出すと——
どちらも“静けさの中に力”を感じる。
やっぱりこの時代のトヨタは本気だったと思います。
