ホンダNSX(日本仕様)とアキュラNSX(北米仕様)は、見た目こそほぼ同じですが、その背景にはブランド戦略・法規対応・市場文化といった“深い違い”が隠されています。
この記事では、エンブレムだけでは語れない両者の本質的な差を、一次情報(メーカー公式資料・当時のカタログ・北米販売資料)をもとに詳しく比較。
「どちらを選ぶべきか?」を悩む旧車ファンやコレクターに向けて、仕様・ブランド・価値の3視点から徹底解説します。
Contents
- 1 アキュラNSXとホンダNSXの違いとは?【概要・位置付け】
- 2 ホンダとアキュラのブランド戦略の違い
- 3 なぜアキュラNSXは日本で販売されなかったのか?
- 4 初代NSXからタイプR・タイプSまでの仕様差と評価
- 5 よくある質問(FAQ)
- 6 まとめ:どちらがより価値ある選択か?
- 7 コメント:NSXを調べて感じたこと
アキュラNSXとホンダNSXの違いとは?【概要・位置付け】

共通のベースと分かれる“ブランド軸”
初代NSXは、1990年にホンダが開発した世界初のオールアルミモノコック構造のミッドシップスポーツ。
一方、北米ではこのモデルを**「アキュラNSX」**として販売しました。
両車は基本構造・パワートレインを共有していますが、市場ごとの法規・装備・ブランド方針によって細部が異なります。
| 項目 | ホンダNSX(日本仕様) | アキュラNSX(北米仕様) |
|---|---|---|
| ブランド | Honda | Acura(ホンダの北米高級ブランド) |
| エンブレム | “H”ロゴ | “A”ロゴ(Acuraマーク) |
| 型式表記 | E-NA1 / NA2(車検証ベース) | VIN表記(US-DOT準拠) |
| 計器表示 | km/h | mph(マイル) |
| 保安基準 | 日本法規 | US-DOT対応(サイドマーカー・バンパー強化など) |
| 装備差異 | 国内仕様標準 | 寒冷地仕様・安全装備が先行導入される例あり |
両モデルとも本質的な性能は共通ですが、法規対応や市場ニーズに合わせた細部の調整が行われています。
たとえば北米仕様では、サイドマーカーや大型バンパーが採用され、視認性・安全基準に対応。
また、メーターはmph表示で、輸入個体では国内車検時にkm/h併記ステッカーが貼られます。
“見た目は同じでも”異なるブランド哲学
日本では「技術と信頼性のホンダ」として販売されたNSXですが、北米では高級車ブランド・アキュラのフラッグシップとして扱われました。
当時、北米では「ホンダ=大衆車ブランド」というイメージが強く、フェラーリやポルシェに並ぶ存在感を出すためには、高級ブランド化が不可欠だったのです。
このため、北米向けの広告では「Precision Crafted Performance(精密に作られた走り)」というキャッチコピーが使われ、ホンダ本社の「技術の象徴」から、アキュラの「ブランドの象徴」へと立ち位置が変わりました。
要点まとめ
- ベース車両・性能は共通だが、法規・装備・ブランドが異なる
- 北米ではアキュラとして販売され、高級スポーツ路線を強化
- メーター・灯火類などはUS-DOT基準対応
同じNSXでも、ロゴひとつで雰囲気がまったく変わるのが面白いですね。
Aマークを見ると「アメリカの風」を感じます。
ホンダとアキュラのブランド戦略の違い
アキュラ誕生の背景
アキュラは1986年、ホンダが北米市場向けに立ち上げた高級車ブランドです。
当時のアメリカでは、**「日本車=安くて信頼性が高いが、高級感に欠ける」**というイメージが根強くありました。
そのためホンダは、トヨタの「レクサス」、日産の「インフィニティ」に先駆けて、高級志向の独立ブランド戦略を採用。
「Acura=高精度な走り(Accuracy)」の意味を込め、上質な内外装とサービスを備えたブランドとして誕生させました。
北米初期ラインナップには「レジェンド(Legend)」や「インテグラ(Integra)」があり、どちらも日本ではホンダ車として販売。
つまり、**“アキュラ=ホンダの高級輸出ブランド”**という構図が明確に打ち出されていたのです。
ブランド展開の地域差
| ブランド | 展開地域 | コンセプト | 主力車種 |
|---|---|---|---|
| Honda | 日本・アジア・欧州 | 技術と信頼性・合理的価格 | シビック/フィット/ステップワゴンなど |
| Acura | 北米・中国 | 高級感・先進性・ブランド体験 | NSX/MDX/TLXなど |
ホンダが“技術と実用性”を軸にしていたのに対し、アキュラは“ステータスとプレミアム感”を軸に展開。
同じプラットフォームを共有していても、販売戦略・広告・ディーラーネットワークが別設計でした。
北米ではアキュラ専用ショールームを設置し、内装にはアート作品を展示するなど、高級ホテルのような販売体験を提供していたのも特徴です。
日本でアキュラが展開されなかった理由
ホンダは日本国内でアキュラブランドを展開しないまま現在に至ります。
これは単なるマーケティングの問題ではなく、日本独自の市場構造が背景にあります。
主な理由:
- ホンダ自体がすでに高品質ブランドとして確立していた
→ 国内では「ホンダ=信頼の象徴」として十分なブランド価値を持っていた。 - 高級ブランド戦略が成立しにくい市場環境
→ 税制・車検制度・道路事情が高価格車に不利。 - レクサスの後発成功を見ても採算が難しい
→ 販売網を全国展開するコストに見合わないと判断。
結果的に、アキュラ車は日本では「ホンダブランドの上位モデル」として販売される形に統一されました。
その代表例が、レジェンド(北米名:Acura Legend)やインテグラ(北米名:Acura Integra)です。
ブランドの価値観の違い
ホンダ:
「革新的な技術で、誰もが楽しめるクルマを」
アキュラ:
「精密な走りと上質な体験を求めるドライバーへ」
この思想の差こそが、同じNSXであっても「ホンダNSX」と「アキュラNSX」が異なる印象を持つ最大の理由です。
ホンダは技術を誇り、アキュラは体験を売る。
この“価値の見せ方”の違いが、両ブランドの存在意義を分けています。
要点まとめ
- アキュラは1986年に北米で誕生したホンダの高級ブランド
- 日本では「ホンダ=信頼ブランド」が確立しており展開不要と判断
- コンセプトの差は「技術のホンダ」vs「体験のアキュラ」
- 同一車種でもブランド体験と販売戦略がまったく異なる
アキュラのショールームって、どこか“非日常感”がありますよね。
ホンダが見せる「技術の美しさ」とは違う、ラグジュアリーな空気が漂っていて魅力的です。
なぜアキュラNSXは日本で販売されなかったのか?

国内で“アキュラ”が根付かなかった背景
アキュラNSXが日本で販売されなかったのは、単純に「エンブレムの違い」や「輸出戦略」だけが理由ではありません。
その根底には、日本市場の構造的な事情と、ホンダ自身のブランド哲学が深く関係しています。
まず、日本市場ではホンダ自体がすでに「品質・信頼・革新技術の象徴」として確固たる地位を築いていました。
そのため、アキュラを別ブランドとして展開しても「ホンダの上位ブランド」として認識されにくく、ブランドの重複とコストの問題が懸念されたのです。
高級車市場における“土壌の違い”
北米と日本では、そもそも高級車の購買動機や文化が大きく異なります。
北米では「ステータスを示すブランド価値」が重視される一方、日本では「機能・信頼・実用性」を軸に購入判断が行われます。
| 要素 | 北米市場(アキュラ) | 日本市場(ホンダ) |
|---|---|---|
| 消費者意識 | ブランド=ステータス | 機能・信頼性重視 |
| ディーラーネットワーク | 高級車専門店(アキュラ専売) | 総合型販売店(ホンダカーズ) |
| 価格レンジ | 高価格帯に抵抗が少ない | 高額車は販売網・整備コストが課題 |
| 税制度 | 排気量課税なし | 排気量ごとに税負担が増大 |
こうした構造の中で、ホンダは日本市場で「アキュラブランドを導入するメリットが薄い」と判断。
同時に、既存のホンダユーザー層を混乱させないよう、国内は“ホンダNSX”として統一販売する方針を取りました。
レクサス成功後も見送られた理由
興味深いのは、2005年にトヨタが「レクサス」を日本導入した後も、ホンダがアキュラ展開を見送った点です。
実は、当時ホンダ社内でもアキュラ導入構想が進んでおり、販売網や店舗デザインの試作まで進んでいたといわれています。
しかし、次の3つの要因から最終的に中止となりました。
- 販売網拡張コストが巨額(全国専売網の構築が困難)
- 国内ユーザーが“ホンダ車”ブランドに強く愛着を持っていた
- 高級車よりも環境技術(ハイブリッド・燃料電池)開発に注力したい方針転換
ホンダは「ブランドよりも技術革新こそが本質」という哲学を重視し、アキュラ展開を見送る決断を下したのです。
北米と日本のNSXの販売戦略の違い
アキュラNSX(北米仕様)は“プレミアム・ブランド体験”を重視した販売でした。
一方で日本仕様のホンダNSXは、“技術とドライビングの純粋さ”を強調するアプローチ。
| 販売国 | ブランド | 販売戦略 | 顧客層 |
|---|---|---|---|
| 日本 | ホンダ | 技術力・信頼性を前面に訴求 | エンスージアスト・技術志向層 |
| 北米 | アキュラ | 高級感・ブランドイメージを重視 | ラグジュアリー志向層・ビジネス層 |
つまり、NSXという同じ車が、国によって“語り方”を変えていたのです。
その結果、「ホンダNSX=技術の結晶」「アキュラNSX=ラグジュアリースポーツの象徴」という明確な個性が生まれました。
まとめ:あえて分けないという選択
日本でアキュラを導入しなかったのは、「販売機会の損失」ではなく、むしろブランド整合性を守るための選択でした。
ホンダの社是「人間尊重」「技術で社会に貢献する」という原点を考えれば、ブランドを二重化せずに一貫した理念で展開したのは自然な判断といえます。
要点まとめ
- 日本ではホンダブランドが確立しており、アキュラ導入の必要性が薄かった
- 税制・市場文化の違いで高級ブランド戦略が成立しにくい
- 販売網構築コストとユーザー認知の課題が大きかった
- 結果として、ホンダは「技術の象徴」としてNSXを国内展開
「アキュラがあったら見てみたかった!」って思う反面、やっぱり“ホンダNSX”という響きが日本人にはしっくりきますよね。
誇らしい一台です。
初代NSXからタイプR・タイプSまでの仕様差と評価

初代NSXの誕生と世界的インパクト
1990年に登場した初代NSXは、**“日本車初のスーパーカー”**として世界を驚かせました。
ホンダが誇るF1技術を市販車へフィードバックし、アルミモノコックボディ、V6 VTECエンジン、MRレイアウトなど、当時の量産車では考えられない技術を投入。
しかも「誰でも扱えるスーパーカー」を目指し、日常性と耐久性を兼ね備えた構成が画期的でした。
特に注目されたのは、開発段階でアイルトン・セナがテストドライバーとして関わった点です。
セナのフィードバックにより足回り剛性が改良され、サーキットでも街乗りでもバランスが取れた車として完成しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| エンジン | C30A型 3.0L V6 DOHC VTEC |
| 出力 | 280PS / 7,300rpm |
| トランスミッション | 5MT / 4AT |
| 駆動方式 | MR(ミッドシップ・リアドライブ) |
| ボディ構造 | オールアルミモノコック |
| 発売時価格 | 約800万円(1990年) |
当時の国産車価格帯としては突出していましたが、その内容から「フェラーリより安く、壊れないスーパーカー」と称賛されました。
北米市場でのアキュラNSXの評価
アキュラブランドから販売された北米仕様は、信頼性・乗り心地・品質のすべてで高い評価を獲得。
米国の自動車専門誌『Car and Driver』や『Motor Trend』では、フェラーリ348やポルシェ911を上回る評価を得るほどでした。
「NSXは日本が作った完璧なスーパーカー。壊れず、快適で、美しい。」
この評価が北米でのアキュラブランド定着を後押しし、NSXは“アキュラの象徴的存在”として語り継がれています。
現在では北米中古市場でも人気が高く、NA1型(初期モデル)やNA2型Type Sは2000万円超のプレミア価格で取引される例もあります。
タイプR・タイプSの登場と進化
1990年代半ば以降、ホンダはNSXの走行性能をさらに磨くため、特別モデルを展開しました。
| モデル名 | 特徴 | 補足 |
|---|---|---|
| NSX Type R(NA1/NA2) | 軽量化徹底(遮音材除去・エアコンレス仕様)、専用チューニングサス、チタンシフトノブ | サーキット志向。約120kg軽量化 |
| NSX Type S | 快適装備を残しつつ軽量化。Type Rより扱いやすく、街乗りにも適した仕様 | 高剛性ボディと専用内装採用 |
| NSX Type S Zero | エアコン・オーディオ類を廃し、Type R寄りの軽量モデル | サーキット走行愛好家向け |
Type Rは日本専売モデルのため、北米では正規販売されず、逆輸入車として超プレミア価格に。
一方でType Sは北米市場にも少数輸出され、実用性とスポーツ性を両立した“理想のバランスモデル”として人気を博しました。
コレクター市場での評価の違い
今日の旧車市場では、ホンダNSXとアキュラNSXのどちらも高騰していますが、評価軸は異なります。
| 観点 | ホンダNSX | アキュラNSX |
|---|---|---|
| 人気地域 | 日本・アジア | 北米・欧州 |
| コレクター価値 | 純正志向・Type R人気 | 希少性・輸出モデル価値 |
| 整備性 | 国内純正部品入手が容易 | 一部部品は逆輸入扱い |
| プレミア要素 | Type R・S・S-Zero中心 | VINナンバー指定・初期ロット人気 |
特に北米では「日本製スポーツカーの頂点」として語られ、**アキュラNSXの初期ロット(1991年モデル)**は、今でもオークションで高値取引が続いています。
要点まとめ
- 初代NSXは日本初の本格スーパーカーとして世界的評価を獲得
- アキュラNSXは「壊れないフェラーリ」と称され北米で人気化
- Type R/S/S-Zeroは走行志向や快適性で明確な差別化
- 現在は国内外で旧車市場価格が高騰中
どの仕様もそれぞれの魅力がありますが、やっぱりType Rのストイックさには心惹かれますね。
純粋に“走るための車”っていう感じがたまりません。
よくある質問(FAQ)

Q1. アキュラNSXを日本で正規登録できますか?
はい、可能です。
ただし個人輸入扱いとなり、排ガス・灯火類などを日本の保安基準に合わせて改造する必要があります。
特にサイドマーカーやmphメーターのkm/h併記などが必須となり、登録費用は数十万円規模になる場合もあります。
また、US-DOT仕様のままでは車検に通らないため、専門業者によるコンバージョン作業が一般的です。
Q2. アキュラNSXとホンダNSXの部品は共通ですか?
基本的な機関部品・ボディ構造は共通ですが、電装・灯火・メーター・内装パーツには違いがあります。
特に内装色やレザーの縫製、スイッチ形状などは北米独自仕様が存在します。
ただし、国内のホンダディーラーでは一部アキュラ専用部品の取り寄せができないため、北米ディーラー経由で逆輸入するケースも多いです。
Q3. アキュラNSXの方が高値で取引されるのはなぜ?
理由は主に3つあります。
- 北米生産初期ロットの希少性(VINナンバーで識別可能)
- Type Rが未導入だったため、プレミア需要が集中
- 「アキュラブランド初のスーパーカー」という歴史的価値
特に、初期の1991年製アキュラNSXは北米オークションで1台3,000万円を超えることもあります。
Q4. 北米仕様と日本仕様では乗り味に違いはありますか?
基本性能は共通ですが、サスペンションセッティングとステアフィールに若干の違いがあります。
北米仕様は荒れた路面でも安定性を優先し、ややソフト寄りのチューニング。
一方、日本仕様はハンドリング重視で、ダイレクト感を強調しています。
そのため、北米仕様の方が“GTカー的”、日本仕様は“スポーツカー的”な印象です。
Q5. 現在のアキュラ/ホンダNSXの中古市場はどうなっていますか?
2025年時点では、初代NSX(NA1/NA2)の価格が世界的に上昇中。
国内では走行距離6万km前後の個体で1,200〜1,800万円、低走行・Type R仕様では3,000万円を超えることも。
北米ではアキュラNSXが同条件で約20〜30%高値で取引されています。
近年は電動化による「最後の純エンジンNSX」需要が高まり、投資対象としても注目されています。
Q6. アキュラNSXの保険やメンテナンスは難しいですか?
保険加入は問題ありませんが、車両区分が「並行輸入車」となるため一部条件が制限されることがあります。
メンテナンスは基本的にホンダNSXと共通のため、NSXリフレッシュ対応ディーラーで受け入れ可能。
ただし、電装系や灯火類の故障時には北米部品を取り寄せる必要があり、納期が1〜3か月かかる場合もあります。
Q7. 今後、アキュラブランドは日本で展開される可能性はありますか?
現時点では、ホンダから国内アキュラ展開の公式発表はなし。
ただし、北米市場ではハイブリッドNSXの後継やEVスポーツ構想が進行しており、将来的に「アキュラ=電動プレミアムスポーツ」という形で日本導入される可能性もゼロではありません。
要点まとめ
- アキュラNSXは日本登録可能だが、保安基準対応が必要
- 基本部品は共通、一部パーツは逆輸入対応
- 北米仕様は希少性が高くプレミア化傾向
- 乗り味や販売戦略も国によって微妙に異なる
まとめ:どちらがより価値ある選択か?

結論の骨子(先出し)
- 同一プラットフォームでも“価値の軸”が違う:日本仕様=整備性と純正継承、北米仕様=希少性とブランド体験。
- 用途別最適解は明確に分かれる:日常+長期維持なら日本仕様、コレクション+将来価値重視なら北米仕様が有利になりやすい。
- 購入前の決定要因は「保安・登録・部品調達・保管環境・資金計画」の5点セットで最終判断。
1)価値評価の3視点:機能価値/ブランド価値/金融価値
| 視点 | ホンダNSX(日本仕様) | アキュラNSX(北米仕様) |
|---|---|---|
| 機能価値(乗る=走る) | 日本法規適合済・メーターkm/h・灯火類標準。国内ディーラー整備の再現性が高い。 | US-DOT仕様。国内登録時に灯火・速度表示の適合作業が必要。乗り味はややGT寄りの個体が多い傾向。 |
| ブランド価値(語る=見せる) | 「技術のホンダ」の象徴。Type R/Sなど“純正志向”の語り口が強い。 | 「Premium Sportのアキュラ」。Aエンブレムと“北米の文脈”がアイコニックに作用。 |
| 金融価値(資産性) | 走行可能な良質個体は安定推移。Type R等は独自の天井感。 | 初期ロットや限定仕様はプレミア化しやすい。輸出入需給で相場の振れ幅大。 |
※相場の具体値は市場・時期で変動。不明点は現車と一次情報で要確認。
2)“使い方”で結論は変わる:ユースケース別ベストバイ
A. 日常+ワインディングを定期的に楽しむ(年間2,000〜5,000km)
- 推奨:日本仕様
- 理由:日本法規適合、km/hメーター、国内純正部品の入手と整備ネットワークの再現性。
- 注記:ブッシュ・冷却・電装の予防整備を計画的に。
B. ガレージコレクション中心(走行少・保存重視)
- 推奨:北米仕様(希少グレード/初期ロット)
- 理由:履歴整った個体はオークションでも訴求力大。AマークとVINのストーリー性。
- 注記:将来放出時の換金性は高いが、為替・輸送費の影響を受ける点に留意。
C. イベント展示・ショー出展(語りと見せ場づくり)
- 推奨:どちらも可。テーマ次第。
- 軸:日本仕様=「技術史の正統」、北米仕様=「輸出文化・ブランド史」。
- 注記:照明下での再塗装クオリティと内装の張り直し品質が印象を左右。
D. 長期保有の資産形成(10年以上/保管良好)
- 推奨:日本仕様(実用+資産の両立)または北米仕様(履歴極上)
- 注記:リフレッシュ記録やメーカー証明・輸入時書類の一貫性が将来価値のレバー。
3)登録・法規・適合コストの現実(北米仕様を国内で)
- 灯火類:サイドマーカー処理、前後バンパー規格差の整合、ヘッドライト配光の確認が必要な場合あり。
- 速度計表示:km/h併記(ステッカー等)での対応が一般的。
- 排ガス・騒音:年式に応じた基準での適合確認。
- 概算費用レンジ:数十万円規模が目安(作業範囲・部品入手性で上下/不明要素は事前見積必須)。
- リスク:部品納期の遅延、作業再調整による追加費用。
→ 結論:北米仕様は「登録までのプロジェクト管理」が鍵。信頼できる業者選定が最重要。
4)部品・整備ロジスティクス:可用性の差をどう埋めるか
- 日本仕様:ホンダ系ネットワークでの可視性が高い。再生産パーツの適合照合が容易。
- 北米仕様:内装・電装・灯火で専用品が点在。逆輸入ルート確保で安定。
- 共通:消耗品・機関系は多くが共有。年式差・仕様差は品番の一次情報照合が必須。
- 推奨運用:予防交換は“まとめ調達”。輸入便は関税・送料を含めたバッチ発注でコスト平準化。
5)総保有コスト(TCO)思考:5年間モデル(例示)
※前提・為替・走行距離・保管環境で大きく変動。不明は現車ベース要見積。
| 項目 | 日本仕様(目安) | 北米仕様(目安) |
|---|---|---|
| 初期取得 | 国内市場価格 | 海外相場+輸送+通関+登録適合 |
| 年次整備 | 国内ディーラー/専門店で平準化 | 国内+逆輸入パーツの納期・送料が上振れ要因 |
| 突発整備 | 電装・冷却・ブッシュ類 | 同左+専用灯火・内装の調達難易度 |
| 保管 | 屋内・除湿推奨(共通) | 同左 |
| 売却価値 | 証明類整備で安定 | 希少仕様は為替と海外需要でボラティリティ高め |
→ 含意:“乗る”比率が高いほど日本仕様が扱いやすい。
“保有して魅せる(売買も視野)”なら北米仕様のストーリー性が武器。
6)チェックリスト:買う前に最終確認すべき10項目
- 用途比率(走行・展示・保管)
- 保安適合の見積(北米仕様のみ)
- 部品調達ルート(国内/逆輸入)
- 主要履歴(事故・塗装・整備記録)
- 錆・電蝕ポイントの現車確認(アルミでも要警戒)
- 電装健全性(配線、ハーネスの改造有無)
- 冷却・油脂系のメンテ周期
- 予防整備の計画表(ブッシュ・ホース・ポンプ類)
- 保管環境(屋内・除湿・電源)
- 売却出口の想定(国内/海外、相場観と為替)
7)安全・法令・保険の留意(共通)
- 安全:ブレーキ・タイヤ・ハーネスは“見た目良好”でも年式劣化を疑って点検。
- 法令:灯火・メーター・排ガスは年式基準に適合。グレー運用は不可。
- 保険:時価設定は市場価格との乖離が起きやすい。付保額の見直しと査定書の保管が有効。
- 自己責任:改造・適合変更を伴う作業は、専門業者の指示に従い、運行前点検を徹底。
最終意思決定フレーム(3問で決める)
- あなたは“走るために所有”しますか、“所有するために走る”のですか?
→ 前者=日本仕様優位/後者=北米仕様が有利になりやすい。 - 5年後、売る可能性はどれくらい?
→ 高い=希少な北米仕様も選択肢/低い=整備性の高い日本仕様が心安らか。 - 登録・適合・部品待ちの“プロジェクト化”を楽しめますか?
→ 楽しめる=北米仕様の強みが活きる/ストレス=日本仕様で幸福度が高い。
要点まとめ
- 日本仕様:法規適合・整備再現性・実用信頼に優れる。長期実走派の最適解。
- 北米仕様:AエンブレムとVINの物語性、海外需要でのプレミア性。コレクション派に刺さる。
- 判断は「用途×法規×部品×保管×資金」の5軸で。プロジェクト管理できるなら北米、即戦力で楽しむなら日本。
コメント:NSXを調べて感じたこと
正直、この記事を書くまで
「エンブレムが違うだけじゃないの?」
と思っていた僕ですが、調べていくうちにアキュラというブランドの背景や、NSXという車に込められた哲学に深く惹かれていきました。
たしかに、スペックだけを見ればホンダNSXとアキュラNSXに大きな差はありません。
でも、販売戦略・市場評価・ブランドの持つ意味まで踏み込むと、それぞれに“らしさ”があって面白い。
アメリカでは「アキュラNSX=高級スポーツの象徴」、
日本では「ホンダNSX=技術と情熱の結晶」
──そんなふうに、国ごとに“伝わり方”が違うのもクルマの奥深さですね。
もし僕が手に入れるなら…正直まだ迷います(笑)
でもきっと、エンブレムよりも**「このクルマとどんな時間を過ごすか」**が大事なんだろうなと思いました!
