日産プレジデント PGF50は、1990年代後半に登場した国産最高級セダンでありながら、そのデザインは決して派手さを前面に出したものではありません。
むしろ、当時の高級車としては控えめで、落ち着きや威厳を重視した造形が選ばれています。
そのため中古市場では「地味」「存在感が薄い」といった評価を受けることもありますが、資料を丁寧に見ていくと、そこには明確な思想と狙いが存在していたことが分かります。
本記事では、PGF50のデザインを単なる見た目として語るのではなく、当時のセダン市場や日産の立ち位置、ショーファーカーとしての役割を踏まえながら、その特徴と評価を整理します。
購入を検討している方が「このデザインと長く付き合えるか」を判断できるよう、外観・内装それぞれの設計意図や、現在の視点から見た価値についても触れていきます。
Contents
プレジデント PGF50のデザイン思想と開発背景

PGF50のデザインを理解するうえで重要なのは、「流行を追う高級車」ではなく、「役割を明確に定めたセダン」として開発された点です。
1990年代後半、日本の高級車市場はセルシオやシーマといった個人ユーザー向け高級セダンが注目を集める一方で、公用・法人用途を前提とした車は、過度な主張を避ける方向に進んでいました。
当時のプレジデントに求められていた役割
PGF50が担っていたのは、単なるフラッグシップではなく、
- 要人送迎
- 公的機関・法人用途
- 運転手付きでの使用
といった、ショーファードリブン前提のセダンとしての役割です。
そのため、デザイン面でも「目立つこと」より「場に溶け込むこと」が優先されました。
先代モデルからの変化
先代プレジデントは直線基調で威圧感のあるデザインでしたが、PGF50では曲面を多用し、全体的に柔らかい印象へと移行しています。
| 要素 | 先代 | PGF50 |
|---|---|---|
| ボディライン | 直線的 | 曲面主体 |
| 印象 | 威圧感 | 落ち着き |
| 主張 | 強い | 控えめ |
この変化は、国産高級セダン全体の潮流とも一致しており、「威厳=大きく角張る」という価値観からの転換点に位置付けられます。
海外市場を意識した要素
PGF50の骨格やプロポーションには、当時の海外向け高級セダンとの共通点も見られます。
ただし、デザイン自体はあくまで国内基準でまとめられており、過度にスポーティな要素や派手な加飾は採用されていません。
これは、長時間後席に乗る乗員の心理的負担を軽減するための配慮とも考えられます。
デザイン評価が分かれやすい理由
PGF50のデザインが評価の分かれる理由は、その意図が分かりにくいことにあります。
見た目のインパクトを重視する視点では物足りなく映りますが、役割や背景を理解すると、過不足のない造形であることが見えてきます。
要点まとめ
- PGF50はショーファードリブン前提のセダン
- 派手さよりも場に溶け込むデザインを重視
- 先代より柔らかく控えめな造形へ転換
- 背景理解で評価が変わるデザイン
資料を読み比べていると、PGF50のデザインは「語らないこと」を選んだように感じます。
主張を抑えた分、時代や用途に寄り添う姿勢が見えてきて、この車らしい落ち着きにつながっているのだと思います。
プレジデント PGF50 外観デザインの特徴
PGF50の外観デザインは、一目で強い印象を与えるタイプではありません。
しかし、全体を構成する要素を分解して見ていくと、「あえて目立たせない」ための工夫が随所に盛り込まれていることが分かります。
これはショーファードリブンを前提としたセダンとして、非常に一貫した設計です。
ボディプロポーションの考え方
PGF50は全長・全幅ともに堂々としたサイズですが、プロポーション自体は過度に誇張されていません。
| 要素 | 特徴 |
|---|---|
| 全体シルエット | 伸びやかで低重心 |
| フロントノーズ | 短すぎず長すぎない |
| キャビン | 後席空間を意識した配置 |
ロングホイールベースを感じさせつつも、視覚的な重さを抑えることで、都市部や公的施設の前に停まっていても威圧感が出にくいバランスになっています。
フロントデザインの特徴
フロントマスクは、PGF50の性格を最も象徴する部分です。
- 横基調のグリル
- 控えめなメッキ表現
- 角を丸めたヘッドライト形状
これらは「高級感を出すために主張する」のではなく、「品格を損なわないために抑える」方向でまとめられています。
同年代の高級セダンと比較すると、あえて装飾を減らしている印象を受けます。
サイドビューの処理
サイドビューは非常にフラットで、キャラクターラインも最小限です。
| 部位 | デザイン意図 |
|---|---|
| ドア面 | 余計な凹凸を排除 |
| ウインドウ周り | 過度なメッキを使わない |
| ピラー | 目立たせない処理 |
この処理により、走行中よりも停車時の佇まいに重きが置かれていることが分かります。
リアデザインの考え方
リアは水平基調を強く意識した構成で、車幅を実寸以上に感じさせない工夫が見られます。
- 横に広がるテールランプ
- 控えめなエンブレム配置
- 不要なスポイラー類を排除
後続車に対して存在を誇示するというより、「淡々とそこにある」印象を与えるリアデザインです。
当時のセダン市場との比較
1990年代後半は、スポーティさや先進性を前面に出すセダンが増え始めた時期でした。
その中でPGF50は、
- 流行の先端を追わない
- 時代に左右されにくい造形を選ぶ
という立ち位置を明確にしています。
この選択が、現在では「古さを感じにくい」と評価される理由の一つでもあります。
要点まとめ
- PGF50は威圧感を抑えた大型セダン
- フロントは控えめで品格重視
- サイド・リアは装飾を最小限に整理
- 停車時の佇まいを重視した外観設計
写真資料を眺めていると、PGF50の外観は「語らない上質さ」を狙っているように見えます。
派手さはありませんが、時間が経っても極端に古びない理由は、この抑制の効いたデザインにあるのだろうと感じます。
プレジデント PGF50 内装デザインと質感の評価

PGF50の内装デザインは、外観以上にその車の思想がはっきり表れる部分です。
豪華さを前面に押し出すのではなく、「長時間座って違和感が出ないこと」「乗る人の立場を選ばないこと」を重視した構成になっています。
この点は、個人向け高級セダンと明確に異なるポイントです。
インテリア全体の基本思想
PGF50の室内は、視覚的な刺激を抑えた水平基調でまとめられています。
| 要素 | 特徴 |
|---|---|
| デザイン方向 | 水平・左右対称 |
| 色使い | 落ち着いた単色系 |
| 装飾 | 必要最小限 |
ドライバーが主役というより、後席を含めた車内空間全体の調和が優先されています。
そのため、スポーティさや先進性を期待すると物足りなく感じる可能性があります。
素材選びと仕上げの特徴
内装素材は、当時の日産フラッグシップらしく本革と本木目が基本です。
ただし、使い方は控えめで、過度なコントラストは避けられています。
| 部位 | 素材の傾向 |
|---|---|
| シート | 本革(柔らかさ重視) |
| パネル | 本木目(光沢抑制) |
| スイッチ類 | 実用優先 |
特に木目パネルは、主張を抑えた色調で、照明条件によって印象が大きく変わらないよう配慮されている印象です。
シートと着座感の評価
PGF50のシートは、包み込むような形状というよりも、自然な姿勢を維持しやすい設計が特徴です。
- クッションは柔らかめ
- サイドサポートは控えめ
- 長時間着座を前提とした形状
後席に関しても、姿勢変化が少ない移動を想定しており、リラックスというより「疲れにくさ」を重視しています。
操作系と視認性
操作系は、物理スイッチを多用した時代らしい構成です。
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| メーター | 視認性重視 |
| スイッチ配置 | 直感的 |
| デジタル表示 | 必要最小限 |
現在の車と比べると情報量は少なく感じますが、誤操作を防ぐための割り切りとも取れます。
内装デザインの評価が分かれる理由
PGF50の内装が評価の分かれる理由は、「豪華さの方向性」が現代の感覚と異なるためです。
装備や素材は確かに上質ですが、それを誇示するような演出はありません。
- 見た目の華やかさ → 控えめ
- 実用時の落ち着き → 高評価
という評価軸の違いが、そのまま好みの差につながります。
要点まとめ
- 内装は刺激を抑えた水平基調
- 素材は上質だが主張は控えめ
- シートは疲れにくさ重視
- 操作系は実用優先の設計
内装写真を見比べていると、PGF50は「使われること」を前提にした空間だと感じます。
見せるための豪華さではなく、静かに役目を果たすための上質さという点で、今では少し珍しい価値観の車内かもしれません。
プレジデント PGF50はセダンとしてどう評価されているか
PGF50の評価を考える際に重要なのは、「どの基準でセダンを評価するか」によって結論が大きく変わる点です。
スポーティさや先進装備を重視する評価軸では見劣りする一方で、ショーファードリブンとしての完成度という視点では、非常に一貫した評価が可能です。
走行性能に対する評価の位置付け
PGF50はVH45DE型V8エンジンを搭載していますが、その性能は加速や刺激を前面に出すものではありません。
| 評価軸 | 内容 |
|---|---|
| 加速感 | 余裕重視 |
| エンジン音 | 静粛性優先 |
| ハンドリング | 安定志向 |
踏み込めば十分な力を発揮しますが、それを演出する方向性ではなく、「常に余力がある」状態を保つためのセッティングです。
この点は、ドライバー主体のセダンと大きく異なります。
乗り心地と静粛性の評価
セダンとしての評価で、PGF50が最も高く評価されるのがこの部分です。
- 路面入力を丸める足回り
- エンジン回転数を抑えた巡航
- 外界音を遮断するボディ設計
これらにより、後席に座る乗員が車の動きを意識せずに移動できる環境が作られています。
同時代セダンとの評価軸の違い
1990年代後半の高級セダン市場では、
- 個人オーナー向け:走り・デザイン
- 法人・公用向け:静粛性・信頼性
という二極化が進んでいました。
PGF50は明確に後者を選択しており、その分「一般ユーザー視点」では評価が伸びにくかった側面があります。
現在の視点から見た評価
現在の旧車市場では、PGF50は「分かる人向けのセダン」として評価される傾向があります。
| 評価されやすい点 | 評価が分かれる点 |
|---|---|
| 落ち着いた佇まい | 地味に見える外観 |
| 静かな乗り味 | スポーティさ不足 |
| 高級感の質 | 維持コスト |
派手な価値を求める層からは敬遠されがちですが、役割を理解した上で選ぶ層からは安定した評価を得ています。
評価が安定しにくい理由
PGF50は絶対的な台数が少なく、比較対象も限られるため、評価が語られる機会自体が多くありません。
その結果、
- 情報が断片的
- 印象論が先行しやすい
という状況が生まれやすい車種でもあります。
要点まとめ
- PGF50は刺激より余裕を重視したセダン
- 乗り心地と静粛性は高評価
- 個人向け高級車とは評価軸が異なる
- 現在は理解者向けの存在として評価されやすい
資料を読んでいると、PGF50は「評価されるための車」ではなく、「役目を果たすための車」だったように感じます。
その割り切りが、今では逆に個性として残っているのかもしれません。
現在の視点で見るPGF50デザインの価値

PGF50のデザインは、登場から時間が経った現在だからこそ、評価の軸がはっきりしてきた部分があります。
当時は「控えめ」「地味」と受け取られることもありましたが、現在の視点で見ると、その抑制された造形は独自の価値として捉え直されています。
流行に左右されにくいデザイン
PGF50の外観・内装に共通するのは、強い流行要素を極力取り入れていない点です。
| 観点 | 評価 |
|---|---|
| 造形 | 時代性が薄い |
| 装飾 | 最小限 |
| 色使い | 落ち着き重視 |
このため、同年代の「先進性を売りにした車」と比べると、極端な古さを感じにくいという特徴があります。
現代の高級セダンとの対比
現在の高級セダンは、
- 大型グリル
- 強いキャラクターライン
- デジタル装備の主張
といった要素が目立ちます。
それに対しPGF50は、存在感を抑えること自体が価値となっています。
この差は好みが大きく分かれますが、静かな威厳を求める層には明確な魅力となります。
所有することで見えてくる評価
PGF50のデザインは、短時間の試乗や写真だけでは評価しにくい傾向があります。
- 日常的に目にする
- 同じ空間に長く身を置く
- 周囲の反応を含めて感じる
こうした積み重ねの中で、「主張しない心地よさ」が評価につながりやすいデザインです。
セダンという形式との相性
4ドアセダンという形式において、PGF50のデザインは非常に一貫しています。
| 要素 | 相性 |
|---|---|
| 後席重視設計 | 高い |
| 落ち着いた外観 | 非常に高い |
| 長期使用 | 向いている |
スポーティセダンのように「飽きる・古く見える」方向ではなく、「変わらない」ことが価値になるタイプです。
要点まとめ
- 流行を排したデザインは現在でも古びにくい
- 現代セダンとは真逆の価値観
- 短時間では評価しづらいが、長く付き合うほど理解が深まる
- セダンという形式と非常に相性が良い
資料を眺めていると、PGF50のデザインは「語らないことを貫いた結果」なのだと感じます。
強く印象に残らなくても、時間が経つほど違和感が出にくい。
その静かな完成度こそが、この車のデザインの価値なのかもしれません。
まとめ
プレジデント PGF50のデザインは、派手さや先進性を競うものではなく、役割と立場を明確に定めたうえで成立しています。
外観は威圧感を抑えた大型セダンとしてまとめられ、内装も刺激を排した落ち着きのある空間が重視されています。
その結果、短時間で強い印象を与えるタイプではないものの、長く接するほど違和感の少なさが際立つデザインとなっています。
セダンとしての評価は、スポーティさや装備競争を基準にすると控えめに映りますが、ショーファードリブンを前提とした静粛性や佇まいという観点では非常に一貫しています。
現在の視点で見れば、流行に左右されない造形はむしろ強みであり、落ち着いた価値観を求める層にとっては、今なお意味のある選択肢と言えるでしょう。