マツダ RX-3の型式であるS102AとS102Bは、いわゆる前期・後期という言葉でまとめられることが多いものの、実際には外観だけでなく、設計の考え方や装備、細部の仕様に段階的な違いが存在します。
旧車市場では「AかBか」で評価や印象が分かれることもあり、購入やレストアを考えるうえで無視できないポイントです。
一方で、資料や個体情報が断片的になりやすく、「何が確実な違いで、どこからが個体差なのか」が曖昧なまま語られているケースも少なくありません。
その結果、誤解や過度な期待を持ったまま検討が進んでしまうこともあります。
この記事では、S102AとS102Bの違いを一次情報ベースで整理し、外観・機構・装備の差を冷静に切り分けて解説します。
どちらが上位かを断定するのではなく、どう違い、どんな前提で選ぶべきかを明確にすることを目的としています。
購入・保管・維持・レストアを真剣に考えている方の判断材料として、現実的な視点で読み進めていただければと思います。
Contents
RX-3 S102AとS102Bはどの時点で何が変わったのか

マツダ RX-3の型式であるS102AとS102Bは、一般的に「前期・後期」として語られることが多いものの、その実態は一度の大きな変更ではなく、段階的な仕様整理と法規対応の積み重ねによって区別されています。
まずは「いつ・なぜ」区分が生まれたのかを整理する必要があります。
型式記号「A」「B」が示す意味
S102A/S102Bという表記は、単なる販売時期の違いではなく、メーカー内部での仕様管理区分を反映したものです。
この時代のマツダ車では、排ガス規制や保安基準の改定、装備内容の整理に合わせて型式末尾が更新されるケースがあり、RX-3もその流れに含まれます。
| 項目 | S102A | S102B |
|---|---|---|
| 区分 | 初期仕様 | 後期仕様 |
| 変更性格 | 基本設計段階 | 改良・適合対応段階 |
| 主目的 | 市場投入 | 規制・商品力調整 |
※年式や細かな適用時期は資料により差異があり、正確な切替月については不明な点も残ります。
背景にある時代要因
S102AからS102Bへの移行期は、
- 排出ガス規制の強化
- 安全基準の見直し
- 市場競争の激化
といった要因が重なっていました。
そのため、S102Bは「全面刷新」というよりも、既存設計をベースに、必要な調整を加えた改良型という位置付けが現実的です。
「別物」ではなく「発展形」
ここで重要なのは、S102AとS102Bがキャラクターの異なる別モデルではないという点です。
基本構造やコンセプトは共通しており、
- 操縦性
- ロータリーエンジンの性格
- 車格・立ち位置
といった根幹部分は引き継がれています。
違いは、使われ方や制度への対応を踏まえた「詰め」の部分に集中しています。
なぜ混同されやすいのか
現存する個体の多くは、
- 補修・交換歴がある
- 年代をまたいだ部品混在
- 当時の改修対応が反映されている
といった事情を抱えており、外観や装備だけでA/Bを断定できないケースも少なくありません。
この点が、情報の混乱を招く一因になっています。
要点まとめ
- S102A/S102Bは段階的な仕様区分
- 大刷新ではなく改良・適合が主目的
- 基本設計は共通でキャラクター差は小さい
- 現存車は個体差・改修歴に注意が必要
資料を追っていくと、S102Bは「別のRX-3」ではなく、当時の制約の中で磨き直された姿のように感じられます。
同じ骨格を持ちながら、時代に合わせて手を入れていく──
そんな流れが自然に見えてきますね。
外観の違いで見分けられるポイントはどこか

RX-3 S102AとS102Bを見分ける際、最初に注目されやすいのが外観の差です。
ただし結論から言うと、外観だけでA/Bを完全に断定するのは難しいというのが現実です。
ここでは「違いとして語られるポイント」と「注意すべき点」を分けて整理します。
フロント周りに現れやすい差異
S102Bでは、保安基準や商品改良の流れを受けて、フロント周辺の意匠や仕様が整理されたとされています。
具体的には、灯火類や細かなトリムの仕様が変更・統合される傾向がありました。
| 部位 | S102Aの傾向 | S102Bの傾向 |
|---|---|---|
| 灯火類 | 初期仕様 | 基準対応・整理 |
| フロント意匠 | 初期デザイン | 細部調整あり |
| トリム | バリエーション多め | 統一傾向 |
ただし、どの変更が「必ずBの特徴」と言い切れるかについては、資料間で差があり、不明確な部分も残ります。
リア周り・外装細部の違い
リア周りについても、
- レンズ類の仕様
- バッジ表記
- モール類の有無
などが比較対象になります。
ただし、これらは年式途中変更や補修交換の影響を受けやすい部位でもあります。
現存車では、AとBの要素が混在している例も珍しくありません。
塗装色・外観仕様による誤認
当時のカタログカラーや外観仕様も、A/Bの識別に使われることがありますが、
- 再塗装
- 色替え
- 当時オプションの存在
といった要素が絡むため、外装色だけで判断するのは危険です。
外観判断の限界
重要なのは、
- 外観は「傾向」を掴む材料
- 決定打にはならない
という認識です。
S102A/S102Bの区別を正確に行うには、車体番号・年式情報・当時の資料との突き合わせが不可欠になります。
要点まとめ
- 外観差は存在するが断定材料としては弱い
- 灯火類や細部意匠に整理傾向が見られる
- 補修・改修で混在個体が多い
- 外観だけでA/Bを決めつけないことが重要
資料写真を並べて見ていると、「違うようで、決定的ではない」という印象を受けます。
外観はあくまで入口で、本当の判断はもう一段深いところにありそうですね。
外観の違いで見分けられるポイントはどこか(スペック補足あり)
RX-3 S102AとS102Bは、外観差が語られやすい一方で、「数値として明確に違う部分」は意外と多くありません。
まずは両者に共通する基本スペックを整理し、そのうえで仕様差の捉え方を明確にします。
基本スペック(共通項目中心)
| 項目 | S102A | S102B |
|---|---|---|
| 車名 | RX-3 | RX-3 |
| 型式 | S102A | S102B |
| エンジン形式 | ロータリーエンジン | ロータリーエンジン |
| 排気量 | 約1.1Lクラス | 約1.1Lクラス |
| 駆動方式 | FR | FR |
| トランスミッション | MT | MT |
| ボディ形式 | クーペ / セダン(系統) | クーペ / セダン(系統) |
| 車体寸法 | 大きな差なし | 大きな差なし |
スペック上「変わらない」ことの意味
ここで重要なのは、
S102A → S102Bで、走行性能の方向性が変わるような大幅な数値変更は確認されていない
という点です。
つまり、
- エンジンの基本構成
- 車格・ポジション
- FRロータリークーペという性格
は共通しており、A/Bの違いは数値スペックよりも仕様整理・法規対応・装備調整に寄っています。
外観差が強調されがちな理由
スペック差が小さいため、
- ライト類
- バッジ
- モール
- 細部意匠
といった視覚的に分かりやすい部分が、違いとして語られやすくなっています。
しかし、これらは後年の交換・改修で変わりやすく、外観=型式差と短絡するのは危険です。
要点まとめ
- S102A/S102Bで大きな数値スペック差は確認されていない
- 基本構造・車格・走行キャラクターは共通
- 違いは「性能差」より「仕様整理・適合対応」
- 外観差は補修・交換で混在しやすい
資料を整理していくと、「数値で語れる違いが少ない」という事実そのものが、S102AとS102Bの関係性を物語っているように感じます。
同じ骨格を、時代に合わせて微調整していった流れが自然に見えてきますね。
機構・装備面での変更点とその背景

RX-3 S102AからS102Bへの移行で注目すべきなのは、エンジンや車体構造を刷新するような大変更ではなく、法規対応と商品性維持を目的とした機構・装備の整理です。
ここを誤解すると、「Bの方が高性能」「Aは古い設計」といった短絡的な評価につながりやすいため、背景と合わせて整理します。
エンジン・駆動系の基本構成
ロータリーエンジンそのものの基本構成は、S102A/S102Bで共通しています。
- エンジン形式
- 排気量クラス
- FRレイアウト
といった根幹部分に、仕様を分ける決定的な差は確認されていません。
出力やトルク特性についても、A/Bで一律に異なる数値が公式に整理されている資料は乏しく、年式・グレード差が混在するため、断定はできません。
排ガス・法規対応に関わる調整
S102Bでは、時代背景として
- 排出ガス規制の強化
- 保安基準の見直し
が進んでおり、それに合わせた補機類・制御系の整理が行われたと考えられます。
ただし、どの部品がA専用・B専用と明確に分かれているかについては、一次資料でも完全には整理されておらず、不明な点が残ります。
| 観点 | S102A | S102B |
|---|---|---|
| エンジン基本構成 | 共通 | 共通 |
| 排ガス対応 | 初期基準 | 改定基準対応 |
| 補機類 | 初期仕様 | 整理・変更あり |
※具体的な部品番号差や詳細仕様については、公的に一括整理された資料がなく、断定不可です。
装備面の整理と商品性維持
S102Bでは、
- 装備内容の整理
- 標準/オプションの再編
- 生産効率を意識した仕様統合
といった動きが見られます。
これは性能向上というよりも、販売継続とコスト管理のバランスを取るための改良と捉える方が自然です。
「乗り味」が変わったという評価について
一部では「Bの方がマイルド」「Aの方が荒々しい」といった印象論も語られますが、これらは
- 経年劣化
- 整備状態
- 個体差
の影響が非常に大きく、型式差によるものと断定できる根拠はありません。
現存車同士を比較する際は、型式よりコンディションを優先すべきです。
要点まとめ
- 基本的な機構・レイアウトはA/B共通
- S102Bは法規対応と仕様整理が主目的
- 装備変更は性能向上ではなく商品性調整
- 乗り味の差は型式より個体差の影響が大きい
資料を読み解いていくと、S102Bは「別の車」ではなく、時代の要請に応じて無理のない範囲で整えられた姿だと感じます。
骨格を変えずに続ける判断は、当時の現実的な選択だったのかもしれませんね。
維持・レストア視点で見るS102AとS102Bの差
S102AとS102Bの違いを、現代で最も実感しやすいのが維持とレストアの現場です。
カタログ上の仕様差よりも、部品の残存状況や作業時の現実が、型式ごとの差として現れてきます。
部品供給の現実と型式差の影響
RX-3全体に言えることですが、純正部品の新品供給については不明な点が多く、A/Bで明確に有利・不利を断定できる状況ではありません。
ただし、以下のような傾向は考えられます。
| 観点 | S102A | S102B |
|---|---|---|
| 生産時期 | 早い | やや後 |
| 現存台数 | 少なめ傾向 | 相対的に多め |
| 部品取り個体 | 限定的 | やや探しやすい可能性 |
※これは市場の体感的傾向であり、公式統計が存在するわけではないため断定はできません。
外装・内装部品の難易度
外装・内装部品については、
- A専用
- B専用
- 年式途中変更
が混在しており、型式より「現車についている部品」を基準に考える必要があります。特に、
- レンズ類
- モール
- 内装トリム
は、後年の交換で型式本来の仕様と異なっている例も多く、「Aだから合う」「Bだから違う」と単純に判断できません。
機関系整備での考え方
エンジン・駆動系については、A/Bの違いよりも、
- 使用履歴
- オーバーホール歴
- 補修の質
が圧倒的に重要です。
ロータリーエンジンという特性上、型式より個体コンディションが支配的になります。
レストア方針の違いが出やすいポイント
S102Aを選ぶ場合、
- 初期仕様へのこだわり
- 当時感の再現
を重視するレストアになりやすい傾向があります。
一方S102Bでは、
- 実用性重視
- 維持しながら乗る方向
という選択肢を取りやすい場合もあります。
ただし、これは型式そのものよりオーナーの方針による差が大きい部分です。
要点まとめ
- 維持面では型式差より個体差が支配的
- 部品はA/B専用が混在し判断が難しい
- 機関系は履歴と状態が最優先
- レストア方針は型式より価値観次第
現実的に考えると、S102AかBかよりも「今その車がどんな状態か」を正確に把握することが、結果的に後悔しない選択につながりそうです。
型式はあくまで入口で、本質はそこから先にありますね。
現代で選ぶならS102AとS102Bはどう考えるべきか

最後に、RX-3 S102AとS102Bを現代で選ぶ視点から整理します。
ここでは希少性やイメージではなく、「購入後にどう付き合うか」という現実的な観点を重視します。
型式で選ぶより「前提条件」で考える
現代においてS102A/S102Bを選ぶ際、
- Aだから不利
- Bだから完成度が高い
といった単純な序列は成立しません。重要なのは、
- 現車の状態
- 修復・整備履歴
- 保管環境
です。
型式差よりも個体差の影響が圧倒的に大きいという点は、繰り返し強調しておく必要があります。
S102Aを選ぶ意味が生まれるケース
S102Aは、
- 初期仕様への価値
- 当時の雰囲気を重視
- 細部の違いに意味を見いだす
といった価値観を持つ人に向いています。
市場に出回る数が少ない分、「その仕様で残っていること自体」に意味を感じられるかが判断軸になります。
S102Bを選ぶ意味が生まれるケース
S102Bは、
- 維持しながら乗る
- 法規・仕様整理後の安定感
- 部品取りや情報量の相対的多さ
といった点を重視する人に向いています。
ただし、これも「選びやすい傾向」があるだけで、必ずしも楽に維持できるわけではありません。
| 観点 | S102A | S102B |
|---|---|---|
| 価値の置き所 | 初期性・希少性 | 実用性・整理後仕様 |
| 選び方 | 仕様への理解前提 | 状態重視 |
| 向いている層 | こだわり派 | 現実派 |
「違いを理解した上で選ぶ」ことが最大の価値
S102AとS102Bは、どちらが正解という関係ではありません。
- なぜ違いが生まれたのか
- どこが同じで、どこが違うのか
- 何が分かっていて、何が不明なのか
これらを理解した上で選ぶこと自体が、RX-3という車と向き合う姿勢だと言えます。
要点まとめ
- 現代では型式差より個体状態が最重要
- S102Aは初期性・雰囲気重視向け
- S102Bは維持現実を見据えた選択向け
- 違いを理解して選ぶことが最大の価値
資料を一通り整理してみると、S102AとS102Bの差は「優劣」ではなく、「時代と事情の違い」だと感じます。
その違いをどう受け止めるかで、選び方も付き合い方も自然と決まってくるのかもしれませんね。
よくある質問

Q1. S102AとS102Bで走行性能に明確な差はありますか?
公式に整理された数値差は確認されておらず、走行性能の体感差は個体差や整備状態の影響が大きいと考えられます。
Q2. 外観だけでAとBを見分けることは可能ですか?
難しいです。
補修や交換により混在している個体が多く、外観のみでの断定はおすすめできません。
Q3. レストアベースとして有利なのはどちらですか?
型式よりも現車の状態が重要です。
錆や欠品の少ない個体の方が有利になります。
Q4. 部品の入手性に差はありますか?
明確な差は確認されていません。
市場流通やストック状況に左右されます。
Q5. 将来的な価値を考えるとどちらが有利ですか?
市場動向は不明です。
希少性だけでなく、状態と需要が価値を左右します。
Q6. AとBで車検の通りやすさは違いますか?
基本的には個体状態次第です。
型式差だけで有利不利は判断できません。
Q7. 初めてRX-3を買うならどちらが無難ですか?
一般論としては、状態の良い個体を優先すべきです。
型式は二の次になります。
Q8. 純正度にこだわるならどちらが向いていますか?
S102Aは初期仕様に価値を見いだす人向けですが、維持難易度は上がる可能性があります。
Q9. S102Bは改良型なので完成度が高いですか?
整理・適合対応は進んでいますが、完成度の優劣を断定できる根拠はありません。
Q10. 最終的な判断基準は何ですか?
現車の状態、維持環境、そして自分が何を重視するかです。
まとめ
RX-3 S102AとS102Bの違いは、外観や型式記号以上に、「時代背景と事情の違い」を反映したものです。
基本構造やキャラクターは共通しており、数値スペックで明確に優劣を付けられる関係ではありません。
違いの多くは、法規対応や仕様整理といった現実的な理由から生まれています。
現代で選ぶ際に重要なのは、型式そのものではなく、現車の状態と自分の付き合い方です。
初期性に価値を見いだすのか、維持現実を優先するのか。
その判断軸が定まっていれば、S102AでもS102Bでも、後悔の少ない選択につながるはずです。
違いを理解したうえで選ぶことこそが、この車を選ぶ最大の意味だと言えるでしょう。