クラウンS120の数あるグレードの中でも、1983年のマイナーチェンジ後に登場した M-TEUターボは、独特の存在感を持つエンジンです。
2.0L直列6気筒をベースにシングルターボを組み合わせた仕様で、静かなフィーリングと力強い中低速トルクを両立し、当時のクラウンらしい“重厚な走り”を実現しました。
しかし、発売から40年近くが経過した今、このM-TEUターボを快調に維持するためには、現代車とはまったく違う「旧車ならではの視点」を持ったメンテナンスが不可欠です。
現場の整備士からは「M-TEUは扱い方を間違えなければ長持ちするが、弱点を放置した個体は突然トラブルが出る」とよく言われます。
特にタービン周りの熱劣化、負圧ホースの硬化、点火系の弱り、燃料供給系の汚れなどは、すべて走行に直結する重要ポイントです。
また、特有の“年代劣化トラブル”を放置すると、タービンブロー、始動不良、ハンチングなど、大掛かりな修理に発展することもあります。
この記事では、M-TEUターボの特徴から、弱点・交換必須部品・タービン寿命の実情・負圧系の管理方法まで、実際の維持に役立つ一次情報ベースの内容だけを深掘りして解説します。
古い車に慣れていない人でも分かりやすい構成としつつ、実際の整備現場で重要視される“要点”をすべて網羅。
これからM-TEUターボ車を購入する人にも、すでに所有している人にも必ず役立つ「実用・保存版メンテナンスガイド」です。
Contents
- 1 M-TEUターボエンジンの特徴とクラウンS120における位置付け
- 2 M-TEUの弱点と壊れやすい部品の実情
- 3 タービン周りの寿命とメンテナンス方法
- 4 M-TEU特有の負圧制御系の管理ポイント
- 5 M-TEUを長く維持するための定期整備メニュー
- 6 部品供給状況と“今のうちに確保すべき”交換パーツ
- 7 よくある質問(FAQ)
- 8 まとめ
- 9 参考リンク
M-TEUターボエンジンの特徴とクラウンS120における位置付け
M-TEUは、M型SOHC直列6気筒エンジンにターボチャージャーとEFIを組み合わせた、トヨタ初期のターボエンジンの一つです。
クラウンS120では後期型の一部グレードに搭載され、1G系とは違うキャラクターを持つ“トルク重視型ターボ”として位置付けられていました。
M-TEUの基本スペックと性格
- 排気量:1,988cc
- バルブ機構:SOHC(2バルブ)
- 過給機:シングルターボ
- 燃料供給:EFI(電子制御燃料噴射)
- 最高出力・トルク:カタログ値ベースで1G-EUより高出力・高トルク
スペック上はそこまで高回転型ではなく、低〜中回転域のトルクを厚くした設計です。
クラウンの重量級ボディを想定し、街乗りや高速巡航で“余裕を感じる”方向に振られています。
整備士に聞いたところ、M-TEUは「高回転をブン回すタイプではなく、2,000〜3,500rpmあたりでターボトルクを活かしてゆったり走ると調子が長持ちしやすい」そうです。
オイル管理さえきちんとしていれば、ターボ付きとしては比較的長寿命な部類と見る声もあります。
S120ラインナップにおける位置付け
クラウンS120のエンジンラインナップをざっくり整理すると、次のようなイメージになります。
- 1G-EU:静粛性重視・ノーマルな高級セダン向け
- 1G-GE/1G-GTE:スポーティ・高回転志向(ハードトップなど)
- M-TEU:ターボによる余裕感+“重厚な乗り味”を重視したグレード
そのため、M-TEU搭載車は「静かにスッと加速するクラウンらしさ」と「ターボらしい余裕感」の両方を求めるユーザーに好まれていました。
メンテナンス上の大きな特徴
M-TEUは構造として次のような特徴があり、これがメンテナンス内容を決めるポイントになります。
- ターボ付きゆえにエンジンオイル・冷却水の管理が最重要
- 負圧ホースやバキューム配管が多く、硬化・亀裂で不調が出やすい
- 初期のEFI+ターボ制御のため、センサー・配線劣化の影響が大きい
- M型ヘッドのガスケットまわりは熱負荷で痛みやすく、冷却系不調が続くとガスケット抜けリスクが上がる
つまり、M-TEUは**「オイル・冷却・負圧・電装」の4本柱を意識してメンテナンスする必要があるエンジン**です。
要点まとめ
- M-TEUはSOHC直6ターボで、トルク重視の“余裕ある走り”が持ち味。
- S120の中では「重厚さ+ターボ感」を両立した独自ポジション。
- オイル・冷却・負圧・電装の4分野を意識したメンテナンスが必要。
整備士さんより、「M-TEUは乱暴に扱うとタービンやヘッドまわりにすぐダメージが出るけれど、きちんとオイル管理してクールダウンを意識していれば、思った以上に長持ちするエンジン」だそうです。
ターボ付きだから特別に怖がる必要はなく、弱点を理解して付き合うことが大事という印象を受けました。
M-TEUの弱点と壊れやすい部品の実情

M-TEUはターボ付きとしては比較的シンプルな構造ですが、40年近い経過と設計年代の特性ゆえに、特有の弱点がはっきり存在します。
特にタービン周りの熱、負圧ホースの劣化、電装系の弱まり、燃料系の汚れは“定番トラブル”で、放置すると一気に走行不能へ発展することもあります。
この章では、M-TEU固有の弱点を深掘りし、壊れやすい箇所とその理由を詳しく整理します。
● ターボ周辺の熱劣化(最優先の弱点)
M-TEUで最も問題となるのが、タービンおよびその周辺の熱負荷です。
■ タービン本体の劣化
- 白煙(オイル上がり)
- 過給圧がかからない
- 金属音・軸ガタ
M-TEUのタービンは年代的に耐熱性能が低く、冷却やオイル管理が甘いと急速に寿命が縮みます。
オイルの粘度選びや交換サイクルが性能維持の要です。
■ オイル供給ラインの詰まり
長期放置車に多い症状で、細いタービン供給ライン内部にスラッジが詰まり、タービン内部へ十分にオイルが回らなくなります。
これが起きると数分でタービンを壊す危険があります。
● 負圧(バキューム)ホースの劣化
M-TEUは1G系以上に負圧ホースの数が多く、1本割れただけで不調になるエンジンです。
典型的な症状:
- アイドルばらつき
- ブーストが安定しない
- エアコンON時の回転補正不良
- 始動直後のハンチング
負圧ホースは熱と経年で硬化しやすく、見た目では割れが分からない場合もあります。
整備士からは「全部新品にして初めて本来の調子になる」とよく言われます。
● 点火系の弱り(M型特有の“始動性低下”)
M型エンジンは元々点火にシビアで、ディスビ内部・コード・プラグの弱りが顕著に現れるタイプです。
主な発生症状:
- 冷間時にかかりにくい
- 加速時の息つき
- 失火による振動
点火系は新品がまだ比較的手に入るため、早めの交換が効果的です。
● 燃料系の汚れ(インジェクターの詰まり)
M-TEUは燃圧が高くなく、インジェクターの噴射量低下が走行フィーリングに直結します。
症状:
- 失火気味の振動
- ガソリン臭
- 加速時のもたつき
特に長期放置車はガム質の付着が多く、**インジェクター洗浄(超音波)**が非常に有効です。
● 冷却系の弱り(オーバーヒートリスク)
M-TEUのヘッドは熱に弱く、冷却系不調が続くとヘッドガスケット抜けのリスクがあります。
原因となる部位:
- ウォーターポンプ劣化
- サーモスタット固着
- ラジエーターファンカップリング劣化
- ラジエーターの内部詰まり
特にファンカップリングは見落とされやすく、夏場の渋滞でオーバーヒートを起こすM-TEUが後を絶ちません。
要点まとめ
- 最優先弱点:タービン本体・オイル供給ラインの熱劣化
- 定番トラブル:負圧ホース割れ・点火系弱り・インジェクター詰まり
- 冷却系不調はガスケット抜けにつながるため要注意
- M-TEUは“熱と負圧と電装”の3分野を重点的にチェックすべき
タービン周りの寿命とメンテナンス方法

(M-TEU最大の弱点を“壊さず長持ちさせる”ための深掘りガイド)
M-TEUの維持で、最も重要で、最もトラブルが多く、そして修理が難航する領域――それがタービン(ターボチャージャー)周りです。
S120のタービンは現代のボールベアリング式とは異なり、耐熱性・オイル管理への依存度が非常に高い設計。
40年の経過により、タービン本体・オイル供給ライン・負圧制御・排気周りは“弱点の集合体”ともいえる状態になっています。
この章では、M-TEUターボの寿命傾向、壊れる理由、延命する方法、日常の乗り方、そして中古・リビルトの実情まで、実際に維持するための内容だけを徹底的に掘り下げます。
● M-TEUタービンの寿命目安(現場整備士の体感ベース)
■ 目安:8〜12万km
これは当時の国産ターボ全般に共通しますが、オイル管理が悪い場合は4〜6万kmで寿命が来ることもあります。
寿命の兆候
- 白煙(特に再加速時)
- 過給圧がかからない/立ち上がりが遅い
- キーンという金属音
- 軸のガタ(手で触って分かるレベルは完全アウト)
タービンが終わると走行性能が大きく落ち、最悪はエンジンへオイルを吸い込み“暴走(ディーゼル化)”のリスクがあります。
● タービンが壊れる主な理由
■ 1. オイル管理不足
もっとも多い原因。
タービン軸を潤滑するオイルが劣化すると、軸受が一気に摩耗します。
- 交換サイクルが長すぎる
- 粘度が低すぎる
- スラッジが溜まった古いオイルを使い続ける
M-TEUは熱を溜め込みやすいので、5,000kmまたは半年以内の交換が理想。
■ 2. 冷却不足(クールダウン不足)
走行直後にすぐエンジンを切ると、タービン内部の油温が急上昇し、焼き付きの原因になります。
- 高速走行直後の即エンジン停止
- 坂道/渋滞/夏場の即停止
現場では「走行後1〜2分のアイドリング」が必須とされています。
■ 3. オイル供給ラインの詰まり
特に長期放置車で多いトラブル。
M-TEUの細い金属ラインはスラッジが詰まりやすく、詰まり=タービン即死です。
■ 4. 排気漏れ・排気温度上昇
エキマニ割れやガスケット抜けで高温ガスが漏れ、タービンのハウジングが過熱されるケース。
● タービンを長持ちさせる具体的メンテナンス
■ オイル:粘度10W-40〜15W-50が現実的
M-TEUは古い設計のため、粘度が薄すぎるオイルは向きません。
夏場は15W-50を推奨する整備士も多いです。
■ オイル交換サイクル
- 5,000km or 6ヶ月
- タービン車は季節ごとの交換が理想
オイルフィルターは毎回交換推奨。
■ オイル供給ラインの清掃 or 新品交換
スラッジ詰まりは最悪のリスク。
ラインが外せる車両なら早めに確認しておくと安心感が段違いです。
■ クールダウン走行
- 高速・山道 → 最後の数kmを“軽めの負荷”で走る
- 駐車後 → 1〜2分アイドリング
M-TEUにターボタイマーを付けるユーザーも一定数います。
■ エキマニ・遮熱板の健全性確認
- 割れ
- 歪み
- ガスケット抜け
排気漏れはタービン温度上昇に直結するため、初期症状で対処するのが重要。
● 中古・リビルトタービンの実情(超重要)
■ 中古タービン
現状、状態が読めない部品の筆頭。
外観が綺麗でも内部は摩耗しているケースが多く、装着後に白煙が出る個体もあります。
相場:5〜12万円
■ リビルトタービン
M-TEUのタービンは部品供給の都合で「完全リビルト」が難しい領域です。
- すべての業者で対応できるわけではない
- CHRA(カートリッジ)が廃盤
- 交換できる範囲に制限がある
信頼できる専門業者に依頼することが大前提となります。
要点まとめ
- M-TEUのタービン寿命は8〜12万kmが目安
- オイル管理・冷却・供給ライン詰まりが最大の故障要因
- クールダウンの習慣は必須
- 中古タービンは状態が読みにくく、専門業者のリビルトが現実的
- タービン周りは“熱との戦い”が維持の核心
M-TEU特有の負圧制御系の管理ポイント

(“ホース1本の割れ”で調子を崩す旧ターボの核心領域)
M-TEUターボを安定して維持するうえで、もっとも見落とされやすく、しかし走りに直結する領域が「負圧(バキューム)制御系」です。
1980年代のターボ車は現代の電気式制御とは異なり、負圧ホースと機械式アクチュエーターが重要な役割を担っており、M-TEUも例外ではありません。
たった1本の劣化・割れ・抜けで、アイドル不調からブースト不良まで一気に症状が出ることがあります。
この章では、M-TEUの負圧制御の仕組み、劣化ポイント、交換の実際、そして“すべて新品に交換した後に劇的に改善する理由”を深掘りします。
● M-TEUの負圧制御の特徴
■ “ホースの本数が非常に多い”
M-TEUはターボ+EFI時代の初期設計のため、
- ブースト制御
- EGR
- アイドルアップ
- 負荷補正
- 点火時期制御
など、数十本のホースで負圧を分配しています。
これらのホースが1本でも劣化すると、吸入空気量の制御が狂い、アイドルハンチング → 失火 → ブースト不良といった多段階の不調に繋がります。
● 代表的な劣化ポイント(重要度順)
■ 1. 負圧ホース(ゴム硬化・亀裂)
40年経過したM-TEU車では、ほぼ全てが硬化しており、触ると“パリッ”と割れる個体も珍しくありません。
症状:
- アイドルばらつき
- エアコン負荷で回転が落ちる
- 始動直後の不安定
- ブースト立ち上がりが遅い
■ 2. バキュームタンクの劣化
負圧を一時的に保持するタンクが劣化すると、アイドルアップ作動や負荷補正が効かなくなります。
■ 3. バルブ(VSV)の動作不良
M-TEUのVSV(バキュームスイッチ)は経年で固着しやすく、信号は来ているのに動作しないケースが多いです。
症状:
- アイドルアップ不良
- EGR不動
- 過給時の補正エラー
■ 4. インテーク配管の割れ
樹脂製パイプやゴムジョイントも経年でひび割れます。
吸気漏れは空燃比を大きく狂わせるため、最重要ポイントのひとつ。
● “全部新品に交換”が最も効果が出る理由
整備士の多くが口を揃えて言うのが、「M-TEUは負圧系を全部新品にすると、別物のように調子が良くなる」
ということ。
理由は明確で、
- 古い車は複数のホースが“少しずつ”漏れている
- 漏れ量の合計がECU制御の許容量を超える
- 補正がパンクし、アイドルやブーストが乱れる
といった構造的欠陥があるためです。
1本だけ交換しても改善しないのは、他に複数の“半端に劣化したホース”が残るためです。
ホースは汎用品(内径3mm・4mm・6mmなど)で代替できるため、コストに対して効果が非常に高い整備と言えます。
● 交換の実際
■ 必要なもの
- シリコンホース or 耐熱ゴムホース
- クリップ
- 配管ルートのサービスマニュアル
- 可能であれば負圧計
■ 工程の難易度
- 上側:比較的容易
- タービン後方・インマニ下:やや難しい
- 旧ホースの取り外しが硬化で困難な場合あり
長期的には“全交換が最良”です。
● 負圧計で状態確認すると分かること
負圧計を取り付けると、
- アイドル負圧値の安定性
- 負荷時の変動
- アイドルアップの動作
が確認でき、ホース交換の効果が客観的に分かります。
● インテーク漏れのチェック方法
- キャブクリーナーを吸気付近に吹く(回転変化で漏れ箇所判定)
- スモークテスト(整備工場向け)
- 手触りの確認
インテーク漏れは軽視されがちですが、M-TEUでは不調原因のトップ3に入る重要ポイントです。
要点まとめ
- M-TEUは負圧ホースが非常に多く、1本の劣化でも挙動が乱れる
- VSVやバキュームタンクなど補機類の劣化も定番
- ホース全交換は費用対効果が高く、調子が劇的に改善するケース多数
- 吸気漏れは空燃比を狂わせるため、定期的に点検が必要
M-TEUを長く維持するための定期整備メニュー

(旧ターボを“壊さず・劣化させず・長寿命化”するための実践ガイド)
M-TEUターボは、一見するとメンテナンスが難しそうに感じますが、整備の優先順位を理解して順番に手を入れれば、驚くほど安定して走ってくれるエンジンです。
特に「熱」「オイル」「負圧」「点火」「冷却」の5分野に焦点を当てた定期整備を行うことで、寿命は大きく伸び、トラブルの芽を事前に潰すことができます。
この章では、実際の整備工場でも採用されている“現実的な維持メニュー”を、頻度別・重要度別に深掘りしてまとめます。
●【毎回】給油時・日常点検でやるべきこと(習慣化すべき最重要)
■ 1. 冷却水の量と色を確認
M-TEUは熱に弱く、LLC管理が不十分だとヘッドガスケット抜けに直結します。
- 減っていないか
- 変色していないか(茶色=サビ、白濁=オイル混入の疑い)
■ 2. オイル量チェック
ターボ車はオイル消費が出ることがあります。
オイル不足はタービンとメタルを同時に傷めます。
■ 3. 負圧ホース・インテークの緩み
とくにインマニ下のパイプは振動で緩みやすい部分。
■ 4. 冷間時の始動フィーリング
- かかりが遅い
- 回転が安定しない
- ガソリン臭
これらは点火系弱りかインジェクターの詰まりを疑うサイン。
●【毎5000kmまたは半年】基本整備メニュー(最も重要な周期)
■ 1. エンジンオイル&フィルター交換
推奨粘度:10W-40 ~ 15W-50(季節と走り方で使い分け)
ターボの保護のため、この周期は必ず守るべきです。
■ 2. エアフィルター点検・清掃/交換
古いターボ車は吸入効率が性能に直結します。
■ 3. タービン周りのオイル滲み点検
オイルフィードラインは要注意ポイント。
■ 4. 点火系の点検(ディスビ/プラグ/コード)
M型は点火が強く劣化を拾うため、半年ごとのチェックが理想。
●【毎1年】必須メンテナンス(旧車としての年間ルーティン)
■ ラジエーターファンカップリング点検
固着・弱りがあるとオーバーヒートの原因に。
■ 冷却水交換(LLC)
1年ごとに交換することで、冷却性能が安定し、ガスケット劣化リスクを軽減。
■ すべての負圧ホース点検
白化(白く粉がふく)していたら交換時期。
■ タイミングベルトカバー周辺のオイル漏れ
カムシール・クランクシールの弱りが隠れやすい部分。
●【2〜3年ごと】“効き目が大きい”中期整備
■ ウォーターポンプ交換
M-TEUは熱負荷が高いため、純正新品が手に入る時期に交換しておくと安心。
■ サーモスタット交換
開きが遅くなると水温が安定せず、燃費悪化やエンジン負荷増加の原因に。
■ インジェクター洗浄(超音波洗浄)
詰まり気味の個体は洗浄で劇的に回復します。
●【5〜10年ごと】大規模整備(長期所有に必須)
■ ヘッドガスケット交換(兆候がある場合)
- 冷却水減少
- 白煙
- オーバーヒート歴あり
兆候がなければ無理に交換する必要はありませんが、M型は熱で抜けやすい構造です。
■ タービンOHまたはリビルト交換
寿命・白煙・軸ガタが出たら交換。
新品は存在しないため、実績ある業者でのリビルトが唯一の選択肢です。
■ 燃料ポンプ・燃料ライン交換
燃圧が安定しない場合は積極的に交換を検討。
● 現場が口を揃える「最優先の定期整備」トップ3
- オイル管理を徹底(5,000km/半年)
- 負圧ホースの全交換(最も費用対効果が高い)
- 冷却系の健全性確保(ファンカップリング・LLC・ウォポン)
この3つを守れば、M-TEUはトラブル率が劇的に下がり、想像以上に快調になります。
要点まとめ
- M-TEUは“熱・負圧・点火・冷却”を軸に整備する
- 半年ごとのオイル交換はターボ保護の絶対条件
- 年1回のLLC交換・ファンカップリング点検は重要
- 負圧ホースは全交換がもっとも費用対効果が高い整備
- タービン・ヘッドガスケットは5〜10年単位の大規模整備で対応
部品供給状況と“今のうちに確保すべき”交換パーツ
(M-TEU維持の核心:部品を確保できるか=維持できるか)
M-TEUターボは、1G系エンジン以上に 「部品供給状況の把握」 が重要です。
理由は単純で、M-TEUの生産台数は1G系より少なく、ターボ周りを含めた多くの部品が 代替や流用が効きにくい“専用品” だからです。
特にタービン・負圧関連・冷却系の一部は、今後の維持に直接影響します。
ここでは、部品を “まだ買える・代替可能・完全に枯渇” の3つに分類しながら、現時点の供給リアルと、長期所有に向けた「ストックすべき部品」を深掘りしていきます。
● 今も買える部品(新品入手が比較的容易)
■ 点火系(プラグ/プラグコード/ディスビキャップ・ローター)
M型は点火がシビアなため、これらが新品で買えるのは強みです。
NGK・デンソーの現行品が多く対応。
■ ベルト類
- ファンベルト
- パワステベルト
- エアコンベルト
共通性が高く、現行社外ベルトで問題なく入手可。
■ ガスケット類(腰上の一部)
- タペットカバーガスケット
- インマニ/エキマニガスケット
- Oリング類
ただしヘッドガスケットは後述の通り、在庫が減少中。
■ ホース類(汎用品で代替可能)
負圧ホース・PCVホースは、純正形状にこだわりがなければ汎用シリコン・耐熱ホースで代替できます。
● 供給が不安定・代替が難しい部品(“注意領域”)
■ ウォーターポンプ
M-TEU専用品で、純正在庫は減少傾向。
社外リビルトが存在しますが品質差が大きい領域。
■ サーモスタット
現時点では入手可能だが、温度特性の違うバリエーションが混在しているため、型番確認が必須。
■ インジェクター
新品は減少中。
洗浄(超音波)で延命可能だが、破損時は中古頼りになりやすい。
■ ラジエーターファンカップリング
冷却系の核だが、良品中古を探すしかない状態になりつつある部品。
● 完全に枯渇しつつある部品(ストック優先)
■ タービン(ターボチャージャー)
M-TEU最大の部品問題。
- 新品:存在しない
- 中古:状態が読みにくい
- リビルト:対応業者が限られる
壊れる前に良品を確保しておく=長期維持の現実的な戦略です。
■ オイルフィードライン
タービンにオイルを送る細い金属ラインで、内部詰まりは“タービン即死”。
細いパイプのため再生製作は可能ですが、旧車専門店に依頼する必要があります。
■ VSV(バキュームスイッチ)
電子制御の初期部品で、固着しやすく代替品が少ないため、中古確保が重要。
■ 負圧タンク
樹脂製のため割れが出ると交換必須。
専用品のため、中古在庫が今後減る可能性が高い。
● 長期所有者が“今のうちに確保”している部品リスト
M-TEUを10年以上維持しているオーナーがよくストックしているのは以下の部品です。
- タービン(状態良好な中古 or リビルト)
- ウォーターポンプ
- サーモスタット
- ファンカップリング
- VSV(予備)
- 負圧ホース一式(汎用でOK)
- ディスビキャップ・ローター
- インジェクター(中古良品)
このあたりを確保できている個体は、トラブル対応力が圧倒的に高くなります。
● 部品入手の現実的ルート
■ トヨタ部品共販
まだ新品の残っている部品に強い。
■ 旧車パーツ専門店(リビルト・中古)
在庫の質に大きく差があるため、評判重視で選ぶ必要あり。
■ 海外サイト(CHRA・社外案内)
対応が限られるうえ、M-TEU向けはほぼ存在しないため基本は非推奨。
要点まとめ
- M-TEUは1G系より部品供給がシビア
- タービン・オイルフィードライン・VSVは“早期確保すべき三大部品”
- ウォーターポンプ・サーモ・インジェクターは今後枯渇予測
- 長期所有者は予備パーツの確保でトラブルを未然に防いでいる
よくある質問(FAQ)

Q1. M-TEUターボのタービンは今からでも確保できますか?
A. 可能ですが、状態が良い中古は急速に減少しています。
S120用は専用品のため流用もほぼ不可で、リビルト対応も限られているため、長期所有を考えるなら“動作品の中古”を早めに確保するのが現実的です。
Q2. 負圧ホースは全部交換したほうがいい?
A. はい。
M-TEUは負圧ホースの本数が多く、1本だけ劣化していても不調が出る構造です。
汎用シリコンホースで代替できるため、コストに対する効果が非常に高い整備です。
Q3. M-TEUのヘッドガスケットは弱いと聞くけど本当?
A. 「弱い」というより、熱管理がシビアなエンジンで、冷却不良が続くとガスケット抜けが起きやすいタイプです。
ファンカップリング・サーモスタット・ウォーターポンプの状態が良ければ、問題なく長持ちします。
Q4. ターボタイマーを付けた方がいい?
A. あると便利ですが必須ではありません。運転後に1〜2分のクールダウンを意識すれば、タイマーなしでも充分に保護できます。
Q5. インジェクターの洗浄はどれくらいの頻度で必要?
A. 走行頻度にもよりますが、2〜3年に一度の超音波洗浄をすると、始動性とアイドル安定性が大きく改善します。
長期放置車は必ず実施したい整備のひとつです。
Q6. 点火系はどれほど重要?
A. M型は点火がシビアで、プラグ・コード・ディスビ内部の劣化が不調に直結します。
半年〜1年ごとの点検で大きなトラブルを未然に防げます。
Q7. 中古のM-TEU車を買う時のチェックポイントは?
A. もっとも重要なのは以下の4点です:
- タービンの白煙・過給不足がないか
- 冷却系(水温の上がり方、ファンカップリング)
- 負圧ホースの硬化具合
- 始動〜暖機までの回転安定性
ここが健全なら、他の劣化は整備で取り戻しやすいです。
Q8. 部品が入手できなくなった時の対処法は?
A. 中古やリビルトの確保、他車種流用(ホース類・点火系など)、専門店での再生製作が選択肢になります。
ただし、タービンやVSVなど専用品は早めの予備確保が最も有効です。
Q9. M-TEUはオーバーホールすべき?
A. オイル消費・白煙・圧縮低下がなければ無理にOHする必要はありません。
ただし、タービンが終わったタイミングでヘッド周りを同時整備するケースは多いです。
Q10. 長期所有で一番気をつけるべき部分は?
A. オイル管理・負圧ホース・冷却系の3つです。
この3分野が健康なら、M-TEUは驚くほど長寿命で、街乗り〜高速巡航まで快適に使えます。
まとめ
クラウンS120に搭載されるM-TEUターボエンジンは、1980年代の国産ターボの中でも独特の魅力を持ったユニットです。
低回転から立ち上がる控えめな過給、静粛性の高いM型直列6気筒らしい滑らかさ、そして当時の「電子制御ターボ」の先進性は、現代車にはない質感と味わいがあります。
しかし、その魅力を長く楽しむためには、部品供給の現実と熱・負圧・点火の弱点を正確に理解し、計画的に整備していく必要があります。
もっとも大きなハードルはタービン周りで、専用品で代替が効かず、新品も存在しないため、良い状態の中古やリビルトを確保できるかが長期維持の要になります。
タービンにオイルを送るフィードラインや、負圧制御のバルブ類も劣化しやすい部品で、これらは壊れると車がまともに走らなくなるため、予備を確保しておく価値が高い領域です。
一方で、点火系や消耗品、負圧ホースは今も比較的容易に入手でき、特にホース全交換は費用対効果が高く、M-TEUの調子が驚くほどよみがえる整備として知られています。
冷却系(ファンカップリング・ウォーターポンプ・サーモスタット)は熱に弱いM-TEUの生命線で、ここが劣化するとヘッドガスケット抜けなど深刻なトラブルの原因になります。
逆に、これらをきちんと整備し、オイル交換を5,000kmまたは半年で徹底すれば、M-TEUはターボ車とは思えないほど素直で扱いやすいフィーリングを保ち続けます。
今後の部品枯渇を踏まえると、
- タービン
- VSV
- オイルフィードライン
- インジェクター良品中古
- ウォーポン・サーモ
このあたりを“今のうちに確保”しておくことが、長期所有の安心感につながります。
動画を見ると、実際に負圧ホース総交換やインジェクター洗浄だけで劇的に改善した例も紹介されており、M-TEUが持つ本来の滑らかさと静かさがよく分かります。
こうした整備を少しずつ積み上げていけば、S120は今後も長く、快適に付き合える一台です。
M-TEUターボは、決して「維持が難しいエンジン」ではありません。
必要なポイントを押さえ、部品供給を把握し、無理のないペースで手を入れていけば、その魅力は何十年先まで楽しむことができます。
クラウンS120が持つ独特の重厚感と、ターボらしい伸びをこれからも大切にするために、今回のメンテナンスガイドが少しでも役に立てば嬉しいです。